100人のプロの10人目からのエール‼️
普段の感謝を込めてサプライズの「フランス料理」へ…。
せっかく行くのだから、普段なかなか行けないような高級な所へ…。
サプライズがバレないように…なのか、敷居の高さにビビってしまっているのか…
とにかく緊張している私でした。
その緊張状態でありながら平然を装う私たちに、力をほぐしリラックスさせて下さったのは「おもてなしのプロ」Uさん。
Uさんのワインの説明や食事の説明はまるで、フランスの地方での食事風景や、ワイン農園でご主人が葡萄を丁寧に育てている様子を自然と想像させるものでした。
シェフたちの音なきメッセージを言語化して下さることで、一品一品を噛みしめながら食することができました。
「記念にお写真、撮りましょう」と声をかけて下さるのですが、シャッター1回にも気持ちが込もっています。この時間を振り返る時に、最高の時間を過ごしたと思えるように工夫して下さいます。
「美味しかったなぁ」
「楽しかったなぁ」
そう思う時、そこには必ず「心」があります。
ぜひ、インタビューを!と思うのですが…
まだこの時「100人のプロからのエール」というプロジェクトを構想すらしていませんでした。
約3ヶ月後、是非ともインタビューを!と思ったのですが…
覚えていないだろうなぁと思ったのでまずは、ランチでお邪魔して、お声かけさせていただこうと思いました。
「Uさんとお話ができれば幸いです」と予約に工夫を凝らしてみました。
しかし!
ランチの予約は前回のディナーの予約とは違う名前での予約という大失態。
半分諦めながら向かいました。
お店に着くとUさんが…。
なんと覚えて下さっていました。嬉しいものですねぇ。
今回は、
相手の気持ちを察し、妥協することなく「心」を持って接してくださる「おもてなしのプロ」Uさんにお話を伺うことができました。
◯子どもの頃の夢
「車が好きだったので、車をつくれたらなぁ」
なんとなく、車関係のお仕事をと漠然と思っていたのですが、元々「F1」への憧れがあったみたいで…
「モータースポーツの車をつくる仕事に就きたい」
と言う思いになっていき、自分の進路を子どもの頃の夢へと近づけていきました。
大学は工学部。
いわゆる理数系の分野へと突き進み、夢へと着実に進んでいきます!…
となるはずだったのですが、Uさんは工学部に入学したものの、「数学」「物理」「化学」が苦手だったそうで。
苦手にも関わらず、工学部に入学できていることがすごいのですが…。
「苦手」と認識しているものを大学でさらに専門的に勉強し続けることは辛いものがあったと思います。
Uさんは、途中で「退学」します…が、Uさんの言葉をそのままお借りするならば、「脱落」。
◯今の仕事に就いたきっかけ
大学在学中、ビアガーデンのアルバイトに挑戦します。
リーダーとしてみんなをまとめていたヤンキーのような人、そこで働く人たちみんな「キラキラ」していたそうです。
進むべき道に進み、補正された道のように見える自分の環境は、自分のための道のように感じることができず…
ただ、前の事ことに対して手を抜かずに取り組む彼らの姿は、そんなUさんに光を照らしていたそうです。
その後、ご両親には「8年かかってもいい」と大学卒業を説得されますが、最終的には大学を辞めていきます。
退学後は、自分探しの旅をしているかのように様々なお仕事に挑戦していきます。
その間に何か目指すわけでもないという気まずさから、ご両親に「調理師専門学校に行く」と言ったそうです。
それを受け、ご両親は入学金や学費も工面して下さったみたいで…。
もちろん、ご両親から頂いたお金には手をつけずに取っておいたそうです。
そして嘘ではなく、「今年こそは!」と言う思いで入学を決意するのですが、、、なかなか入学へ踏み切れなかったそうです。
「学校はどう?」
と気まずい質問を投げかけられ
「まぁまぁだよ」
と何とか答えていました。
このことをご両親に打ち明けられたのは、もう少し後になってからだそうです。
色々な所で働いた結果、東京の「バー」での勤務が定着します。
しかし、同時に「料理について学びたい!」「サービスについてももっと学びたい!」
そんな探究心が芽生えてきたそうです。
その探究心から東京をあちらこちらへと行き、自分の感性を刺激する場所を探していきます。
素敵なお店との出会いがありました。
それは、友人に紹介してもらったカフェの奥にある雰囲気のいいフレンチのお店です。
運命のお店でした。
店の扉を開けると、ウェイターの方々の出迎え方やお客さんたちとの空気感に心躍ります。
一通りお店の料理が食べてみたいと感じ、
「これと…これと…これも!」
明らかに食べきれないでしょ!という量の注文をすると、ウェイターさんは
「もしかしたら、食べきれないかもしれません。おすすめは〜」
残したとしても売り上げになれば〜と思って、そのまま受け入れる所が多いにも関わらず、Uさんへの心配りをして下さったウェイターさん。
ふとお店を見渡すと…
アルバイトと思える子でも皆、誇りを持ってお仕事をしていました。
「ここで働きたい!」
大学の頃のアルバイトで感じた、あのワクワク感と同じものを感じたそうです。
そして、その「働きたい」と思わせたお店が今の会社だそうです。
「まだまだこれから。日々勉強です」
しっかりとキャリアを積まれたUさん。支配人という立場であっても探究心という心を持ち続け、お客様にスペシャルな時間を提供して下さっています。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「今の路線で積み上げていきたいですかね…最初から人生が始まるのなら、F1ドライバーにもなってみたいですね」
優しい口調で、しっかりじっくりと考えを巡らせながら、答えて下さいました。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「できなかったのは自分が足りていないから。足りていないのなら、「1」足せばいい。そして、少しでも近づけばいい。小さな努力の積み重ねで、できるように乗り切る。」
Uさんはある本の中で
「ダメなものは誤魔化しちゃダメ」
と書かれた小説を読み、強く共感をしました。その言葉のお陰で大学を「中退」。ではなく「脱落」と振り返ることができていました。
落ち込んだ時、しっかり自分を見つめ、そこに改善策を模索していくことが乗り切るコツのようでした。
できなかったことを誤魔化していては、次への改善策を見つけることはできません。ダメな所のある自分もまた、「自分である」と認めることは、もしかしたらネガティブな事では一切ないのかもしれません。
誤魔化している時点で、「自分は改善することができない」と思い込んでいることと同じことですもんね。
Uさんは「自信はつくものではなく、己を信じること」と言っていました。
自分を信じるからこそ誤魔化さず、次なる課題や希望にチャレンジできるのだと思います。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「ん〜…
最後にして一番難しい質問ですねぇ。
…
…
〇〇になりたい!というものに巡り合ってほしい。」
ご自身の職場でのエピソードも語って下さいました。
「できない」と思っている相手に
「できないのは、しょうがない」
と思い、初めから「やらなくても良い」となってしまう事が、果たして本人のためになっているのか!?と感じた時があったそうです。
相手の可能性を信じる事が、本当の意味での優しさであり思いやりなのかも知れません。
それは、同時に「自分は何もできない」と思い込んでいれば、どんなに恵まれたチャンスが訪れても、つかむことはできません。
自信をつけるには…
まずは、
「自分を信じる」ことからですね。
◯インタビューをして
私たちのグラスには食後のアイスコーヒーが8割程度、残っていました。
私たちの後に入って来られたお客さんも退席していて、お客は私たちだけになってしまっていました。
他のウェイターの方々も、私たちとUさんの時間を大切にして下さっていました。
この後ディナーのための準備があるはず。
とても貴重な時間だったと同時に、時間を忘れ長居してしまっていることに申し訳なく感じ、慌ててアイスコーヒーを飲み干します。
すると…Uさんが私たちの席に戻ってきました。
「もうご退席を〜と言われるのかなぁ。言われても無理のない時間までいたしなぁ。」
そんな不安をよそに、
「思い出した言葉があるんです。小林一三さんの『下足番を命じられたら日本一の下足番になって見せろ そうしたら 誰も君を下足番にしておかぬ』という言葉。私が大切にしている言葉です」
一旦、インタビューを終えてもなお「エール」について考え続けてくれていました。
この一つの出来事だけでも、Uさんの温かさがどれだけのものかが伝わります。
Uさんは司馬遼太郎さんが大好きです。言葉を一つ一つ丁寧にされるところが大好きだそうです。
「天才」という安易な言葉でまとめることはできません。
手を抜かず目の前のことを、そして読み手のことを、深く、深く考え言葉を紡ぐ司馬遼太郎さん。
そんな風に司馬遼太郎さんを語るUさんの「おもてなし」もまた、「天才」の一言でまとめることはできませんでした。
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