100人のプロの61人目のプロ‼️

愛知県の豊根村でチョウザメを育てているプロがいます。

豊根村といえば、茶臼山が頭に浮かぶでしょうか?

4月頃には芝桜が満開に咲き誇り、12月頃にはスキーで賑わう豊根村。

今回のインタビューは、その茶臼山から少し離れたところで。

日本の原風景といいますか…

とてものどかで、落ち着く景色。

暑い空を見上げると、優しい風が木々の葉を揺らします。

川の流れる音、蝉の真剣に奏でる音に、自然を感じます。

それぞれ異なるものたちが調和し合い、一つの風景をつくりあげ、心地良い時間を過ごします。

愛知県で一番人口が少ないと言われるその村で、チョウザメは村民の数を上回ったそうです。


チョウザメと言えば「キャビア」。

チョウザメの卵を塩漬けした世界三大珍味の一つです。

私はキャビアを味わったことがありません。

高級食材のキャビアがチョウザメから頂くことができるまで、7年から10年かかります。

チョウザメは大変デリケートな魚。

簡単に育てることはできません。

ましてや数を増やしていくことなんて…。

手間や時間は価値をさらにつくりだしていきます。

だからキャビアは貴重で、高級なんです。

その中で、村民を上回ったってことは…

すごいことなんです。


昔の北海道の方言でチョウザメのことを

「カムイチェプ」

と言っていたそう。

「カムイ」は「神」。

「チェプ」は「魚」。

チョウザメは「神の魚」。

その異名は、チョウザメの歴史を知れば頷ける気がします。

遡る歴史は3億年も前。

まさに生きる伝説のような存在。


「大丈夫!俺に任せておけ!」

とても優しそうで、あったかい熊谷さんの口癖。

この言葉に安心感を抱きます。

熊谷さんは「チョウザメのプロ」。

インタビューをさせて頂きました。


◯子どもの頃の夢

「天魚(アマゴ)を育てたかった」


中学を卒業しようとする頃、多くの人は高校へ進学していきます。

そんな中、熊谷さんはやりたかったことを貫くため、進学ではなく北設楽町で養殖業を学びに行きます。

周りは高校進学を勧めました。

もし、そこで皆の言うように高校進学を選択していたら…

熊谷さんにとってどんな3年間になったのか…。


熊谷さんのご実家は運送業を営んでいます。

後継者として、家に入ることを求められることはありませんでした。

好きなことをやりたいように突き進めたのは、運送業を叔父さんが継いでくれたから。

そのお陰で魚に没頭していきます。


◯今の仕事に就いたきっかけ

「土木課の課長さんの言葉」


中学卒業後、魚の養殖について学びます。

ノウハウをつかみ、自分なりの流れができ始めた頃、運送業を継いでくれていた叔父さんが亡くなってしまったそうです。

昔から自分を支えてくれていた家業。

後継者として、熊谷さんが引き継ぐ決心をします。

責任ある立場。

「やらねばならぬこと」

「やりたいこと」

は違います。

経営者としての運送業も、魚の養殖も、大切な命を担います。

二足の草鞋(わらじ)を考えたりもしましたが、簡単なものではありません。

「やりたいこと」は趣味にして、運送業の社長業に専念していきます。

朝と夜の餌やりは、忙しくても続けます。

大変という感覚はありませんでした。

仕事をしっかり行っていくことで、趣味に充てる時間が生まれるので、より効率を上げていきます。


熊谷さんもち前の決断力と判断力で、見事に仕事をこなしていきました。

50歳を過ぎた頃、土木課の課長さんとお話に。

村おこしの一つとして、何かできないか!?

というお話の中で課長さんから、

「世界三大珍味を育てられないだろうか?」

と問いかけられます。

三代珍味といえば…

アヒルの肝臓である「フォアグラ」。

地中に眠る「トリュフ」。

チョウザメの卵の「キャビア」。

「熊谷さんなら「チョウザメ」を選ぶだろう」

と当時の課長さんは熊谷さんの心を予測していたのだろうと思います。

熊谷さんはこの話を持ちかけられる前から、チョウザメに興味を抱いていたそうです。

難しさも知っていましたし、たくさんの先行投資の必要性も知っていました。

「村のためになるのなら」

熊谷さんは決意します。

腹の探り合いではなく、信頼し合い、言葉の奥に込められた思いを汲み取ろうとする熊谷さんたちの関係性に、羨ましさを感じます。


キャビアが取れるようになるまで、10年。

それがまた、熊谷さんをワクワクさせていました。

できそうなことに挑戦して過ごす10年も、できなさそうなことに挑戦する10年も、同じ時を過ごしますが、得られるものは違います。

絶望、落胆はあっても、歓喜、希望を感じることがあります。

不可能だと思われる道は、まだ誰も開拓をしていない道ということ。

ネットで調べても出てこないことは、これから自分が記すことができるチャンスなのかも知れません。

分からないから面白い。


熊谷さんは天魚の養殖の知識を活用していきます。

豊根村もできる限りの協力をしていきます。

村独自の支援事業として、補助金を支給していきます。

熊谷さんへの補助金は、新たにチャレンジを行う人を応援するというシステムの、初めての導入です。

これも、「起業したい」と考える人たちに向けて、前例をつくるためでもありました。

熊谷さんの窓口になっている役場の方とお話をさせて頂きましたが、とても親切で優しい方。

そういう方が役場で親身に答えて下さるのだから、豊根村には力があります。

チョウザメを通して、起業や観光やコミュニティの様々な部門での挑戦を、10年以上経った今でも行っていきます。

それは、「神の魚」チョウザメのお導きなのかも。


◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか

「キャビアにあうワインをつくりたい」


チョウザメはいくつかの大きな水槽でグルグルと泳いでいます。

使われている水は天然の湧き水。

人工的に循環させる水ではなく、魚たちにとって過ごしやすい水で育てます。

その地のその場だからできること。

餌は6時間おきにあげているそうです。

人間の赤ちゃんと同じように、丁寧に。丁寧に。


そんな忙しい中でも熊谷さんは「こうしたら面白いかな」ということを常に考えます。

その一つに、土地を活用して「ワイン」の原料である葡萄を育ててみようと考えたそうです。

しかし…

葡萄の栽培の難しさもさることながら、「お酒」ということでの申請書が沢山あるらしく、今はそこまで手が回りません。

豊根村産のワイン。

いつか頂いてみたいです。


◯落ち込んだ時、どう乗り切るか

「次の朝はリセット。新しい一日が始まる」


クヨクヨしても仕方がありません。

例えば…お金がなくなると夫婦仲もギクシャクしていきます。

でも「ないな〜」と言っていても、財布を覗き込んでいても、お金が増えていくことはありません。

ないならないで、次にどうすべきかを考える方が大切です。


ある時、台風が豊根村に猛威を振るいました。

その台風の影響で、土石流が湧き水を止めてしまったことがあったそうです。

チョウザメの命に関わります。

どうしようと立ち尽くしていては救える命も救えません。

熊谷さんは瞬時に判断し、決断していきます。

その行動は最悪な事態を回避させていきました。

「失敗は勉強」

という熊谷さん。

失敗を恐れ何もしなければ、学ぶものは何もありません。

失敗か成功かは後にならないと分かりませんもんね。


◯未来ある子どもたちへのエール

「やり遂げれば何かが残る。

 競争相手が少ないことをやればいい。

 難しいことを。

 何が見直されていくか、分からない。」


今の流行のものが1年後も同じように流行を維持しているかは分かりません。

去年は全く知らなかったものが、当たり前のように皆が持っていたり、食べていたり…

「古い」と言われたものが「原点回帰」と見直され評価されたり。

人の心も、山の天気も、季節のように移りゆく中で、「これは」と思ったものに打ち込む行為は、自分自身が時代をつくっていきます。


教員は

「どの高校行きたい?」

「どの大学行きたい?」

「どの会社に就職したい?」

と尋ねますが、

「どんな会社を創ってみたい?」

とは尋ねません。

子どもたちの無限の可能性に、型を押し付けていては面白くありません。

まずは私たち教員がやわらかい思考でいなくては。


◯インタビューをして

悠々と泳ぐチョウザメをしばし眺めます。

自分より長生きしていく子も、この中にいるのかぁと生命の尊さを感じます。

この自由に悠然と泳ぐチョウザメの世界にも「いじめ」はあるそうです。

「いじめ」を見つければ放ってはおけません。

その子を別の水槽に移します。

気性としては穏やかな子の多い水槽へ。

しかし、その水槽でも同じように「いじめ」を受けるそうです。

逃げても、逃げても。

環境を変えても、仲間を変えても。

状況は変わりません。

ただ…

変わらなくてはいけないのは、その子。

現状を変えたいのなら、まず自分から変わらなければ。

他の子のせい。

環境のせい。

理由はいくらでも出てきますが…

自分を鼓舞し、やる気を出させることはとても難しい。

難しいから、それだけ価値があるのかもしれません。

こうなったら。

ああなったら。

悪いことを考えて動かないより…

こうしたら。

ああしたら。

と希望を胸に進み続けたら「何かが残る」かもしれません。


2020年に日本の川でチョウザメが発見されています。

ペットを放流したにしては数が多い。

養殖場から逃げ出したわけでもなく、原因は不明なまま。

「カムイチェプ」。

「神の魚」とするならば…

「大丈夫!あなたの未来は明るい」

そう言ってもらっているような…。


心の筋トレ部

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