100人のプロの36人目のプロ‼️
身近なのに意外に知らないことってありませんか?
その中の一つ
「百姓」
って知っていますか?
改めて聞かれると詳しく答えられたかったりするのですが…
私自身、農家の方の別の呼称と捉えていました。
字を見てみると、興味深く感じます。
漢字に込められた意味は、太古の昔からのメッセージ。
発明された漢字を略さず当時の形に留めているのは、世界でも日本くらいらしいのです。
社会科を専攻している私にとって、とってもロマンを感じる瞬間ですが、是非とも一緒に考えてみてほしいです。
「百姓」とは「百」の「姓」です。
「百」は「沢山」という意味合いがあり、「姓」は「名前」を表します。
なので、昔は「庶民」や「国民」を表すように全体を指すもの。
その一方で、「沢山の名前を持つ」から、「あらゆることができる人」とも解釈されていました。
確かにお米づくりにおいても、様々なことができなければいけません。
これまた「米」という漢字ですが、「八」「十」「八」と分解することができ、「八十八の工程を必要とするくらいに大変な作物」という意味が込められていると言われています。
今回はそんな沢山の作業工程を必要とし、なおかつ様々な取り組みに挑戦し続ける「米づくりのプロ」Tさんにお話を伺うことができました。
◯子どもの頃の夢
「サッカー選手」
絶対になりたい!
そういう強い思いがあったわけではないそうですが…
地元では優勝するほどの強さがあったため、高校入試はサッカーの推薦で。
その後の進学先は体育学部。
自分の特技を活かして、スポーツトレーナーを目指していました。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「改善すべき点が沢山あった。食べて下さるお客様の顔も見える。それに魅力を感じた」
お父様が個人農家をやられていました。
家業を継ぐ意識もなかったですし、同時にお父様も継がせようとは考えていらっしゃらなかったそうです。
なのでTさんの大学選択に「農業」はありませんでした。
稲刈りの時期は、猫の手も借りたいくらいの繁忙期になります。
Tさんは「バイト」感覚でお父様の手伝いを。
とても大変なお仕事。
しかし…
手伝っているうちに、
「こうした方がもっといいのでは?」
「ああしてみるともっといいのでは?」
そんな気持ちになっていきます。
また…
自分たちが一生懸命につくったお米を
「美味しかった」
と伝えて下さるお客さんたちの表情に出会い
…
気づけばTさんは、農業の魅力にどっぷり。
全くの別分野であった大学を卒業し、実家に戻り家業を継ぐことを決心します。
「農業は未開拓」
そう感じると同時に、
「可能性を充分に秘めている」
という事実に気持ちを高揚させながら、お父様の「個人農家」を会社にしていきました。
お米の生産は夏が本番です。
冬にも何かできないか!?
その想いで野菜の栽培に挑戦します。
まずは基本を。
その基本を学ぶために山梨へ修行にいきます。
ただ野菜づくりを学ぶのではなく、先進的に挑戦されている方を探し自分でアポを取ります。
3年間の修行。
長く感じる時間も、未来を見据えて突き進むためには必要な時間でした。
山梨で一緒に働いていた方と共に、地元に戻ります。
いざ…
野菜づくりが始まります。
最初は、修行してきても分からないことばかりでした。
基本的なことは分かっていても、山梨と愛知とでは土地の性質が違います。
また、代を継ぐということは「経営」という分野でも頑張らなくてはいけません。
不安や悩みが無かったわけではありません。
しかし、
「農業で食を楽しく豊かに」
この会社理念を胸に突き進みます。
Tさんは量より質にこだわりを持っています。
ちゃんとこだわりを持って農業を行なっています。
お米づくりでは昔ながらの製法を守り続けています。
自然の栄養素がじっくり一粒一粒に。
多くの農家さんは、戦後の食糧不足をきっかけに、時間をかけて栽培することよりも化学肥料を中心とした栽培が中心になっていきました。
とにかく生産量を。
時間をかけて自然から得られていた栄養素は薬で補います。
インタビューの際、一人のお客さんが来店されました。
Tさんは
「すみません」
と私たちに。
申し訳なさそうに席を立ち、初めて来たお客さんとお話をします。
「聞こう!」
とするわけではないのですが、聞こえてきます。
そのお客さんは、お米の仲介をするために価格の交渉に来ていました。
「他では〇〇円で提供していたのですが…
こちらではいくらになりますか?」
「この表示している価格でもかなり頑張っている金額になります」
「ん〜…どうしても〇〇円にはならない?」
「利用して下さっているお客様にもこちらの価格で購入して頂いているので、申し訳ないのですが」
とっても親切に受け答えをされていたTさん。
目の前のお客さんだけでなく、普段から関わりのあるお客さんのことも大切に思って下さ
る姿は、Tさんのお人柄を象徴する出来事のように感じます。
手間ひまかけたお米。
量ではなく質にこだわるからこそできるお米。
経験と技術の基盤があってこそ出来上がります。
価格とは、それら全てを含めたものを、私たちが容易に体感するための対価。
私の買い物をする心構えが変わった気がしました。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「プロアスリート」
農業を!
という気持ちはもちろんあったのですが、それ以外でと言われたのならの答えでした。
トップアスリートの緊張感を味わってみたいそうです。
一つのことをとことんこだわりを持って極めていきたいとのお言葉は、農業に通ずるものがあるように思いました。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「起きたことはしょうがない。また起きた時にどう対処できるか!?」
農業は「メンタル」と「体力」が特に必要になってきます。
今日という同じ日は来ません。
今年上手くいったことが、来年も同じように上手くいくとは限りません。
それは、気象、機会、作物…
どれ一つとっても、同じではありません。
できたてのビニールハウスが…
たまたま特に強い台風に遭ってしまい、すごい数のビニールハウスが倒れてしまいました。
ビニールハウスも大きさによりますが、小さいものでも高額だと聞いたことがあります。
後ろ向きになったままでは、何も進みません。
大変な出来事も前を向いてさえいれば「知識」になり、それが「知恵」となっていきます。
特に強い台風で学んだこと…「向き」「強度」「素材」でした。
Tさんはその学んだことを必ず次に、活かしていきます。
毎日のように何かが起きます。
それは毎日、「学ぶ機会」というチャンスです。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「人はみんな違う。
個性は大事にすべき。
自分の良さをもっともっと出して、
好きなことに一生懸命に向かっていけるといい」
Tさんは若い時、他人と比較をしていたそうです。
比較していいことがあったのか!?
というと一つも無かったそうです。
周りの目を気にしていたら、自分自身で
「いい!」
と思ったことに挑戦できなくなってしまうからです。
そんな勿体無い話はありません。
Tさんは今、あらゆることに取り組んでいます。
その挑戦する気持ちが、あらゆる人たちをつなげていきます。
酒蔵の方、
原木椎茸を栽培する方…
さまざまな方々と繋がっていきます。
好きなことに一生懸命に向かっていっている人たちと。
◯インタビューをして
Tさんは毎年新しいことに挑戦しています。
何をしていても自然と考えているそうで。
「自分のお米を使って…」
「自分のところの田んぼを活用して…」
同じことの繰り返しが求められる一方で、進化し続ける必要性。
そんなお話をして下さっているTさんの表情は温かく優しい。
まるで挑戦を楽しんでいる様子でした。
「食を楽しく」
という理念。
「楽しく」の「楽」という漢字。
神様への祈りに使用する、鈴のついた道具を振っている様子からできた漢字です。
そこから「賑やかで心地がいい」という意味が込められているそう。
だから「楽(らく)」は堕落の意味ではなく、「心地よさ」を表現しています。
Tさんのお米はどんなおかずも『心地よく』食すことができます。
食を楽しむことができるのは、栽培する方からの、食す私たちへ「思いやり」という心がこもっているからなのでは…
とお米を食べながら感じていた朝でした。
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