100人のプロの44人目のプロ‼️
「菊」の花をプレゼントされた時…
どんな感情になりますか?
失礼?
不謹慎?
非常識?
なぜそう思うのでしょうか…。
お仏壇やお葬式の際に用いられる「花」だからでしょうか?
もし、私と同じようにそう思っていらっしゃったら、大きな間違いかもしれません。
「菊」の花言葉は「死」を意味するものではありませんでした。
むしろその逆で…
『高貴』『高尚』『高潔』
という言葉。
決して、失礼でも不謹慎でも非常識でもありません。
「高貴」であるがために、亡くなった方への最大限の敬意の表現として「菊」が用いられます。
「菊」の歴史は鎌倉時代とも平安時代とも、はたまた奈良時代とも。
春を象徴するものが「桜」だとすれば、秋は「菊」と言われるほど。
私たち日本人を象徴する花としての位置付けもあります。
海外へ行く際に必要になるパスポート。
その表紙は、「菊」の紋章です。
気づくと私たちとの関わりが想像以上に深い「菊」。
よく考えてみれば、秋の花にも関わらず、今は一年中当たり前のように「菊」が手に入ります。
亡くなった方への尊敬の念は、秋だけに訪れるものではないからでしょう。
しかし現代において「菊」への認識は薄れつつあります。
葬儀には見た目が鮮やかな洋花を選ぶ人が増えてきたり…
子どもたちに負担をかけたくないと、自分たちの代で墓終まいをする人が出てきたり…
楽をしようと、お仏壇の花を造花にする人がいたり…
先祖を想う心、敬う心が薄れてきているように感じる現代において、畏敬の念を表す「菊」の活躍の機会は減ってきています。
時代の変化を言い訳にしない「菊のプロ」Wさん。
生産地日本一のプライドを持ち、今もなお新しい挑戦を考えています。
そんなWさんの人生を伺いました。
◯子どもの頃の夢
「なかった」
W家の長男として誕生したYさん。
周りからは
「後継できてよかったね」
という期待を込められた言葉に違和感を覚えることなく、
「自分が後を継いでいくんだな」
と子どもながら思っていたそうです。
それは重圧とか不自由さとかではありません。
自然だったんです。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「家業だから」
高校へは普通科へ進学します。
「農業は大人になったらやっていく」
だからこそ、今は別のことを身につけていこうと農業科へは進みませんでした。
高校卒業後では「農業大学」へ。
しかし…中退します。
「農業は机の上ではなく、実務が大切」
と思っていたからです。
Wさんの畑では「菊」「メロン」「かすみ草」「キャベツ」などあらゆる農産物を育てていました。
継ぐタイミングで「菊」の栽培に特化していくことを、家族の皆で決めていきます。
「少しはキャベツとかも育てていますけどね」
と言われたので、家庭菜園をイメージしたのですが…
農家の方の規模は違います。
「少しは」と言う言葉。
集荷する際はトラック何台分も必要になる規模でした。
伺った際、北海道の農場を思わせるくらいのビニールハウスが辺り一面に広がり、驚きました。
その中の4棟がWさんの「菊」です。
実務で様々なことを学び身につけていきます。
今は窓の開閉や、水やりなどは全てボタン一つで一括管理されています。
じゃあ誰でもできるのか!?
と言うと、やはりそんな甘い話ではありません。
1棟1棟で温度や水やりの量などは異なってきます。
土の状態や、日当たりの具合で調整が必要になるからです。
隣同士のビニールハウスなら日当たりや土の状態に変わりはないのではないか!?
そう感じてしまうのですが…
違います。
一つ一つのビニールハウスでの状態を見極め、微調整をしていきます。
そればかりは経験とセンスの世界。
「菊」を育てる上で「水やり」や「温度調整」や「肥料」以外に重要になってくる作業があります。
「芽かき作業」です。
一本一本がまっすぐに、そして大きくキレイな花をつけるために必要な作業。
自然のものにも関わらず、売られているものは真っ直ぐに咲いています。
そんなことに今更ながら気付くわけですが…。
実際に育てていらっしゃる場所にお邪魔しました。
ハウスの中にある菊は皆まっすぐに、お行儀よく。
それでも一つ一つに違った特徴を持っていて、でもそれぞれが凛としていて。
Wさんのやり方を全て真似したとしても、同じようなものを育てることはできません。
なんとも言えない、「感覚」と言うセンスが必要になってくるからです。
Wさん自身も
「あの人の菊はなかなかいいなぁ」
と思って情報交換を行ったりはしますが…
ただ真似をするのではなく、参考に。
真似はしません。
その人にはその人の技があるので、同じように真似をしても、同じものはできません。
自分にしかできないことを大切に。
そのこだわりが自信に変わっていきます。
Wさんから頂いた「菊」は葉っぱもキレイ。
濃い緑です。
きっと沢山の栄養を取り入れて、花を咲かせるために頑張ってきたんだと思える葉っぱ。
花のメインだけが美しいのではなく、一つ一つの葉っぱまでもが、力強く美しい。
良い花を咲かせるには、咲く前の準備期間にどれだけ頑張れるかなのでしょうか。
人も「菊」も、同じかもしれません。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「パイロット」
何かそこには昔からの思いが隠されているのか!?
そう感じた私は、
「なぜですか?」
真剣な眼差しで尋ねました。
Wさんの答えは…
「えー。かっこよくないですか!?空飛ぶって」
無邪気な表現で、笑顔でこの一言。
今まで伺ってきた真剣なお話の中で、ポッと緊張をほぐすようなお話をされるWさん。
それがWさんの魅力なんだと思います。
20名集まれば大きな組織と言われる農業の団体。
Wさんのチームは200名の組織。
全てのチームを合わせれば500名。
その幹部をやられています。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「日々やっていくしかない。
最悪になったら別のことも考えて。
考えるだけはタダ」
「菊」にシフトした頃、菊は一大産業でした。
しかし、時代の流れと共に葬儀で「菊」を選択しない人たちや、海外産の普及によって国産は厳しい状況に。
「菊」を売っているだけでは、価値に気づいてもらうことは難しい。
そう考えて、ナイトツアーを企画します。
皆さんは夜、ビニールハウスの中が光っているのを見たことはあるでしょうか?
Wさんの所は「電照菊」が中心です。
夜にしか味わえない景色を体感できるツアー。
それがナイトツアー。
そのツアーでは、しっかりと菊の魅力を伝えていきます。
魅力に気づけてないのなら、魅力に気づいてもらえるよう発信すればいい。
困っているだけでは何も改善されていきません。
考え、模索し、吟味し…
その構想を行動に移して行った時、何かが変わっていきます。
その変化がいいものなのか!?
はたまたよくないものなのか!?
しっかり見極め、次なる策を。
コロナ禍で、需要が一気に減ってしまった時、菊の花を青色に染色することが成功します。
菊を一方面だけの捉えではなく、新しい可能性を見出していけるのは、常に考えているから。
「考えるだけはタダ」なんです。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「普通にしていけばいい。
特別じゃない。
誰でも得手、不得手がある。
劣っていると思わなくていい。」
Wさんが言いました。
「アウトソーシング」
だと。
会社のある業務を他の会社が得意としているのなら、それを他の会社に任せ、その分、自分の会社にしかできないことに専念し、生産性を向上していくこと。
出荷作業が大変なら農協へ委託。
そうすれば大きな機械はいらないし、作業の手間が減っていきます。
その分、他のことに専念することができます。
もし、全てのことは自分たちでやらなければいけないとすれば…
機械への投資は必要になり、手間は増え、新たな分野への開拓は難しくなってしまいます。
人も同じ。
苦手なことを挑戦してみることは大切です。
しかし、挑戦してみてもなお苦手なら、自分の得意分野を他に探っていく方が、より自分にとっての可能性は広がっていく。
自分を会社としてみた時、「わたし」社長であるあなたは苦手分野にお金と労力を注ぎ込むことを選択するでしょうか?
◯インタビューをして
義務教育での社会科の意義は、自分の国に誇りを持つことだと思っています。
その誇りは、皆が協力し合い平和で思いやりある国へと繋がっていくように思います。
海外の方とも話しましたが、やはり先人への感謝が国の力となるのは、どの国でも言えることです。
個人においても同じこと。
ご先祖様を大切にする。
このことは自分自身のアイデンティティの確立にもつながります。
自分が生まれた背景。
代々家族が護ってきたもの。
それを知ることが
「自分とは何者か」
への気づきになります。
その気づきは、お仏壇やお墓へのお参りがきっかけかもしれません。
ご先祖様たちが繋いできてくれたから、
今、
私は、
ここにいます。
「菊」を供えます。
敬意と感謝を込めて。
私にとって、敬意と感謝は、
削ってはいけないもの。
省略してはいけないもの。
Wさんから頂いた菊はまだキレイに咲いています。
私の心を代弁するかのような花びらと共に、感謝の言葉を心で呟きます。
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