100人のプロの60人目のプロ‼️

「美しさ」には訳があります。

積み重ねて、積み重ねて。

努力や労力を積み重ねて美しさは増していきます。

その積み重ねに「想い」を込めれば、そこには「深み」が生まれます。

無駄だと思われるようなことも、大事な一つ。

無駄だと思うのは、そう思う人のレベルが、ただただ達していないからなのかもしれません。

努力を積み重ねれば、必ず何かが得られます。

まだ何も得られていないのは、期待する結果までの努力が、まだ足りていないのかもしれません。

そう気づかせて下さったのは「漆塗りのプロ」永田さん。


先日行われたG7でも、各国の首脳やその配偶者の方々に贈られたお土産は「漆塗り」の器でした。

「日本」といえば「漆塗り」。

「漆」は漆の木の樹液のことです。

漆の木が成長するまでには約10年〜15年の歳月が必要となり、その歳月を経て採取できる量はわずか200m l。

ちょうど牛乳瓶1本分の量になります。

国産の漆の自給率は約3%。

その多くは岩手県で生産されています。


平成30年から文化庁より「国宝」や「重要文化財」の修復などで使用する漆は、下地も含め、「原則国産」とされました。

その際に必要な漆の量は年間2.2トン。

一方、平成28年の生産量は1.2トン。

ますます漆の価値に気づかされます。


「日本の伝統!」

と胸を張ることのできる有り難さに、失って初めて気づくことがないよう、今、学校現場でできることを考えたくなりました。


◯子どもの頃の夢

「自営業」


子どもの頃からお父様のお手伝いしていました。

お父様のお仕事は名古屋仏壇の「箔押し」です。

「箔押し」は、お仏壇に金箔をこしらえる工程のお仕事。

昔からお父様の背中を見てきたこともあって、会社勤めではなく、職人になると心に決めていました。

でも子どもの頃は、自分が何の職人になるかまでは決めていなかったそうです。

お父様は「箔押し」。

そのまま「箔押し」の職人にならなかったのは、お父様が偉大だったからこそです。


◯今の仕事に就いたきっかけ

「直せたらいいな」


名古屋仏壇は、それぞれの得意分野のある工芸士の方たちが、力を合わせて一つのものをつくり上げます。

完成するまで八つの工程を必要としていきます。


中学、高校と、家業である「箔押し」を手伝っていました。

忙しい中でも、有意義に感じられる家業。

「職人になりたい」

この思いを抱く一方で、

「父親には敵わない」

と大きな目標である存在に、自分の進むべき道に思考を凝らします。


「箔押し」の前段階である「塗りの工程」を終えたものが、永田さんの家に運ばれてきました。

繁忙期になると作業場は様々なものが置かれ始めます。

夜遅くに夜食のおにぎりを食べます。

お腹も満たされ、落ち着いた気持ちで片付けようとした時、何かにつまずきます。

自分の体勢を整えようと自分の体に力が入ります。

体が何かに当たりました。

その何かのお陰で、自分自身は大事に至らなかったのですが…

当たったものをそっと見てみると…

塗りの工程を終えて届いていたお仏壇でした。

大きな傷をつけてしまっていました。

お父様はしょうがないと受け取ってくれていても、余計な仕事を増やしてしまったことに大反省。

自分のミスであっても、前段階の職人さんに直接謝罪し、直してもらうようお願いするのは、お父様。

自分で直せたら、どれだけいいものか…。

強く、強く、思います。

小さな頃からの職人への憧れは、そのことをきっかけに「塗り師」の道へ歩み始めます。


「漆塗り」の職人のもとで、一から学びます。

技を身につけるため、「就職」ではなく、まさしく「修行」です。

季節が違えば、天気が違えば、湿度が違えば…

塗り方や乾かし方は違ってきます。

その時その環境下を肌で感じ、判断するために、感覚を鍛えていきます。

修行は5年続きました。

5年の修行の後、自分で看板を構えます。

独立後の初の仕事。

学んできたはずなのに、なかなか満足する完成には至らず、失敗をします。

「まぁいっか」

と誤魔化したとしても、それは永田さんが思い描く「職人」ではありません。

何度も何度も失敗を繰り返します。

3倍の労力で、1つの完成。

失敗が続いて、へこむこともあります。

でもその労力は、確実に知識や経験となって積み重なっていっていることを実感します。

「次、やる時は…」

同じ失敗を繰り返さないために、しっかり分析していきます。

自分の納得できる仕事をするために。

沢山した失敗は、技術に変わり、お客さんの喜びは、永田さんのエネルギーになっていきます。


◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか

「考えたくない」


私たちの生活を一変させたコロナ。

永田さんのところにも大きな影響を与えました。

寺院などの修復作業の仕事も、コロナ禍で全てストップ。

先が見えない不安から、お仏壇お手入れの塗り直しの依頼も、ゼロになっていきました。

墓じまい、仏壇じまいが進む中で、新たにお仏壇を購入する人も少なく、仕事は全てストップ。

先の見えない不安は職人の方たちも一緒です。

職人仲間たちは、どんどん離職していきました。

生活していくため。

仕方ありません。

続けるかどうか…

考えない訳ではありませんでした。

しかしそんな中、永田さんの奥様は近所でパートとして働き始めます。

「漆塗り」の看板を下ろさずに、続けていくために。

一緒に支え合います。


少しずつ塞ぎ込んでいた世の中が、動き始めました。

3年分を取り戻すかのように、依頼の連絡が入り始めます。


永田さんは後ろで座っている奥様を見ずにおっしゃいました。

「妻が繋いでくれた。だから今がある。本当に感謝してる。」


繋いできたからこそ、日本の伝統の技は今も存在します。

当たり前ではないんです。

「考えたくない」の言葉には、計り知れない想いが込められています。


◯落ち込んだ時、どう乗り切るか

「一人じゃない」


コロナ禍の時も同じように歩んでくれた奥様と共に作業をしていきます。

名古屋仏壇の8分業の仲間たちで、一つのお仏壇をつくり上げていきます。

自分の手元にくるものは、誰かが一生懸命につくってくれたもの。

また、それに魂を入れて手を加えていきます。

それを次の職人が繋いでいきます。

皆が真剣に向き合っていることを実感すると、力が沸いてきます。

一人ではつくれないものが、感じさせてくれる力。

その力が、困難を乗り切っていく力になっていきました。

◯未来ある子どもたちへのエール

「失敗して当たり前。

 失敗は終わりじゃない。始まり。

 どんどん経験を」

沢山失敗した方がいい。

永田さんの最初の言葉でした。

私の周りでは、失敗しないために予防線をはることばかり。

転ける前に、転けることばかりを気にして、結局歩くことすら止められるような現場。

転ぶからこそ、痛みを知ります。

怪我をするからこそ、怪我をしない工夫を自ら考えます。

一つの失敗で終わらせてしまうから、失敗することを恐れる子どもたちが増えてしまいます。

「失敗」とはもしかしたら、「敗れる」ことを「失わせる」ために必要な経験なのかもしれません。


◯インタビューをして

先日、ある生徒が

「学校は勉強するところ」

と、言っていました。

彼にとっての勉強は、文字通りテストや試験のための勉強です。


いつからなのでしょうか。

学校が

「学ぶ場」ではなく、「勉強の場」となってしまったのは。

もちろん、知識を学ぶ勉強も大切なことです。

しかし、「よりよく」生きるためには、あらゆる学びが必要です。

志望校進学を目指すための塾と変わらなくなりつつある…

もしくは塾との違いがなくなってきている学校。

義務教育の9年間で身に付く「もの」は何なのでしょうか。


一つのクラスに2〜3人の欠席者がいて当たり前。

学校に行きたくないという子どもに

「学校が全てではない」

という担任の先生。

世の中の大人たち。

学校で学べることが一部だと感じているからこその言葉。


「とりあえずこれ、やっておいて」

と久しぶりにきた子どもに手渡す問題集のプリントに、子どもたちの時間は「とりあえず」費やされます。


もし…

学校で「漆塗り」の技術を学べたら?

もし…

学校で「大工」の技術を学べたら?

もし…

学校で「農業」の技術を学べたら?


そしたら、もっと子どもたちが「伝統」の奥深さに気づき、「技術」の魅力を実感するのではないでしょうか。

学校だからこそ、できること。

真剣に考えたい。


心の筋トレ部

教員であり公認心理師である片野とさとぶーが「心の筋トレ」を実務で実践させていただいています✨皆さんの自己免疫力💪を上げ‼️予病に貢献できるよう、情報発信していきます✨

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