100人のプロの64人目のプロ‼️

中学校の進路選択の際、

「何かになりたい」

という気持ちが特になければ、中学生とその保護者は、“とりあえず”と言うことで学校から“普通科”を勧められます。

望まれるような成績を取れなければ、行ける高校の普通科を。

それでも難しい場合は倍率の低い専門学科を視野に入れるか、もしくは成績を考慮しない専門学校への選択を促されます。

本人の思いを組んだ体で、結果的に子どもを数値で分類していきます。

数字で表された烙印のごとくの通知表や、テストの合計点数による校内順位を基準に、受験させるか、させないかを決めていきます。

その子の人柄は、判断材料には入りません。

それは結果として、子どもが路頭に迷わないようにするため。

感覚で物事を決めていては、子どもたちが困ってしまいます。

最悪な未来にならないよう。

現実的なリスクを少しでも減らしていくことで、自ら命を絶ってしまわないように。


“高校無償化”の波は私立高校の人気を高め、専門学校の金銭的ハードルを軽くしていきました。

しかし、授業料以外の積立金や設備費などの面で負担は高いまま。

その波の中で公立高校は、独自の魅力を出すようになっていきました。

少人数制であったり、今流行りの“プログラミング”に力を入れていたり…

就職する時のことをイメージしやすいように。


「普通科なら、就職する際にあらゆる可能性にも対応できるから」

と、保険をかけた選択肢を並べておきます。

子どもには無限の可能性があるとは思いますが、進路選択に関してはそんな悠長なことは言ってられません。

必要なのは、“挑戦”ではなく“あらゆることへの保険”なんです。

最悪の事態に備える必要があるから大切なんです。

“挑戦?”

それは、挑戦することができるよう力をつけた場合にのみ認められます。

“希望?”

無謀と希望は違います。確実に実現できる段階で、希望を抱きましょう。

理想論はいくらでも語れます。

その理想を語り、子どもたちに希望を持たせ、実現できなかった時、私たち教員は子どもたちに責任を負えるというのでしょうか。

だから、現実を見せるのです。

今の自分ができていないと自覚してもらうのです。

変な理想を抱かせないために。

身の丈にあった未来をさし示してあげることこそが、教師の仕事なのです。

それが…

教師なのです。

「あなたたちは失業者をつくるつもりですか?」

教員に向けられた叱咤激励。

若者に挑戦する機会を惜しみなく提供する堀江さんの言葉です。

堀江さんは、株式会社コアミックスの社長。

「マンガのプロ」堀江さんにお話を伺いました。


◯子どもの頃の夢

「日替わり定食」


パイロットや自衛隊や野球選手。

見たものに刺激を受け、なりたいとその時に感じたものは全て夢でした。

目指すものは一つとは限りません。

同時に、描いた夢に縛られる必要もありません。

どれだけのものに触れ合って、どんな経験をしていくのかが、その人の引き出しとなって、魅力になっていくのだと思います。

そういった意味で、マンガは直接触れ合わなくても、実際に経験をしなくても、その世界感を体験することができます。

堀江さんはマンガを“生き方の情報誌”として言い換えていきました。

文章だけでは想像できることに限りがあります。

絵だけでは、どんな出来事かを理解することに限りがあります。

しかし、絵と文字の表現なら。


◯今の仕事に就いたきっかけ

「老人ホームの訪問」


もうすぐ秋です。

秋といえば学校では文化祭や合唱コンクールがあります。

個人のものや、クラス単位のものなど、種類は様々ですが、努力の積み重ねを発表する場が増えてくる季節です。

そんな季節になった頃、一人の生徒が私に言います。

「合唱コンクールは何のためにやるのですか?」

色々なトラブルを乗り越え、団結していくことの素晴らしさなど、教員としての想いは多々あります。

しかし、団結するために歌うのか!?と言われると、100%頷くことはできず…。

あくまで結果的に団結していくというだけで、むしろそれをきっかけに男女の溝ができてしまったり、クラスへの不信感につながる場合もあります。

何のためにやるのか!?

その明確で、山の頂上のような答えを、学校は用意できていません。


堀江さんは中学生の頃、生徒会長をやっていました。

生徒会のやることの一つとして、年に1回、老人ホームへの訪問があります。

ただ訪問するだけではなく、中学生が劇を披露していきます。

“お祖父さんのために”

“お祖母さんのために”

まだ見ぬ方々であっても、笑顔になってくれたら…と想像しながら計画をします。

少しの時間であっても、癒しの時間となるように、準備をします。

その心で一生懸命に演技をします。

堀江さんたちの姿に、会場は温かい雰囲気と共に感謝の拍手で包まれていきました。

拍手の音の中、拝みながら泣いているお祖母さんの姿が目に入ります。

そうかと思えば、感謝の気持ちを込め、深々とお辞儀をする元軍人さんのお祖父さん。

誰かを喜ばせることの素晴らしさに気づけた出来事。

全てが心に残っていきました。

就職する時、この出来事が自分の歩む未来へとつながっていきます。

“エンターテインメント”という人を喜ばせる仕事。

堀江さんは集英社に就職します。

特に強くマンガを希望していたわけではないのですが、週刊少年ジャンプ編集部へと配属されます。

『北斗の拳』『シティーハンター』『よろしくメカドック』など、それぞれ作家の方たちとチームになって作品をつくり上げていきます。

堀江さんはおっしゃいます。

「マンガは作家が描きたいものをただ描いているのではない」


編集する人も、マンガを描く人も、「読む人の喜ぶ姿」を想像しながら制作していくそうです。

まさに“思いやりの塊”がマンガなのです。

そのことを大切にする堀江さん。

編集長だった頃、発行部数653万部でギネス記録を打ち立てました。

この記録は2023年の4月〜6月における1号あたりの平均部数が117万部であることを考えると、すごい数字というのが分かります。

記録は未だ越えられてはいませんし、デジタル社会において今後は、越えられることはありません。

会社に大きく貢献をしていきました。

当然のように管理職になっていきます。

現場から離れ、読者の皆さんとの関わりは減っていきます。

人を喜ばせることの前線にいないことに、

「何かもっと。

何かもっとやれるんじゃないか!?

読者の方々に何かもっと恩返しができるんじゃないか!?」

そんな感情が湧き起こります。

45歳の時です。

ただ…

そのまま、自分の感情を見て見ぬ振りをして過ごすことだってできるはず。

安定した収入と、安定した暮らし。

感情はちょっと誤魔化して…

ただ、何かを待つように、じっとしていても何も誰も言いません。

しかし、堀江さんは退社します。

読者の方への恩返しの気持ちをもとに、退社後に株式会社コアミックスを立ち上げます。

利益追求ではなく、純粋にみんなの笑顔のために。

様々な新しい取り組みを行っていきました。

マンガのセリフの部分をデータ化したり、カフェをつくってみたり…。

遂には、立ち上げから23年の時を経て、昔から抱いていたことを実行に移していきます。


熊本県立高森高校マンガ学科の創設。


若手の人材は、ベテランの作家さんのところで育てる作家さん任せから、出版社が責任をもって育てていくことを意識していきます。

若者に“挑戦する機会”をつくっていきます。

高森高校のマンガ学科は公立です。

熊本県教育委員会と高森町と、マンガ専門の出版事業を行う株式会社コアミックスさんが協力し、実現した公立高校。

私立や専門学校として開校することをせず、公立高校であるということに、意義があります。

多くの現場で

“収益”

“利益”

“儲け”

そんな言葉が飛び交うよう叫ばれている世の中。

専門学校で絵の勉強をするには学費が高いという理由で、諦めていく子どもたちは多くいたはず。

2023年度の新入生たちは、夢を掲げ挑戦の入学をします。

学校の姿が今、変わろうとしています。

子どもたちに、挑戦する機会の扉が開かれました。


◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか

「科学者」


人が喜ぶような発明をしたいとおっしゃる堀江さん。

実際に東京大学と共同で研究をされています。

電子書籍の流通が増えていく一方で、

“紙媒体は必要なのか!?”

を科学的に考えます。


学校では一人一台のタブレットが支給されました。

全国的に配布され、徐々に生徒たちも慣れ始めています。

授業は、電子媒体であるタブレットの使用が「いい授業」という位置付けとなっています。

全てを電子化にしようとする動きは、子どもの出欠席の連絡にも。

「時代だから」

と一言で割り切って仕舞えば、済むことなのかもしれません。

しかし「楽」を優先することが「喜び」につながるとは限りません。

その選択に誰が喜ぶのか!?

まずは私たち教員も考えることが必要なのだと思います。


◯落ち込んだ時、どう乗り切るか

「いいところをいっぱい引き上げる」


うまくいかなかったり、利益が上がらなかったり…

そうなった時に、

「出費を抑える」

という人と

「もっと稼ぐ」

という人で分かれた時、堀江さんは「もっと稼ぐ」を選択します。

このことはマンガを制作する時にも言えるそうです。

面白くない箇所に焦点を当てて、そこをいくら修正していても、面白いマンガにはなりません。

逆に面白い部分があればそこを膨らませていった方が、面白いマンガは誕生していきます。

その面白いところから、いくつもの面白いものが生まれてくるからです。

何個も何個も…

最終的に、つまらないところはやむを得ず削っていかざるを得ないそうです。

結果的に悪かったところは目立たなくなり、全体的に面白いものになっていきます。

全て無難にできるより、何か一つでも特化してできていたら、それが一つの魅力となっていきます。


生み出さないことよりも、生み出していくことに、目を向ける。

その方がずっと楽しそう。


◯未来ある子どもたちへのエール

「人の喜ぶ顔が自分の喜びになる。

 魅力はいっぱい持ってるよ」


以前、堀江さんが会社にお勤めだった頃、ノーベル化学賞を受賞されたアメリカの博士にインタビューをしたことがあったそうです。

その博士に

「アメリカは個人の個性を大切にしていてすごいですね」

と伝えたところ、博士は

「日本には、アメリカにないすごいところがある」

と返されました。

アメリカでは“個性”“個性”と言われ悩む方がいます。

「ありのままの自分でいい」

と言われながらも

「ありのままの自分」とは何なのか!?

で悩みます。

「自分はこうするんだ!」

と決意したものの“独りよがり”と捉えられることだってあります。

自分で自分の顔を見ることはできないのと同じように、自分の“あるべき姿”や“自分らしさ”を自分だけで気づくことはできません。

自分の瞳の色が何色なのかを自分自身が確認することができません。

自分の性格も優しいのか、クールなのか、自分自身では意外と気づくことはできません。

鏡となってくれるような“社会”や“家族”や“知人”が自分の性格を、個性を、魅力を気づかせてくれるのだと思います。

鏡は自分が覗き込めば自分が見えます。

社会や家族や知人は、関わることで自分に気づけます。

料理をつくり食べてもらって…

美味しいと言われたのなら、それはあなたの魅力なのだと思います。

肩を揉んで…

「楽になったぁ」と思ってもらえたのなら、それはあなたの特技なのかもしれません。

学校がそんな魅力を映しだす鏡のような社会になれたら。


◯インタビューをして

ある担任が私に言います。

「〇〇さんの内申点では△△高校は無理なので、希望を持たせるようなことは言わないでくださいね」

挑戦させることもせず、ただ確実に入れる場所を充てがう。

教師が子どもに希望を持たせずに、どんな仕事があるのでしょうか。

教師が挑戦させずに、何を持って“師”と名乗るのでしょうか。

無理なのか、無理ではないのかを軽々しく判断し語る教員。

堀江さんの心に触れた時、「学校とは」「教師とは」を深く考えました。


マイナスなことはいつまでもマイナスであり続ける訳ではありません。

思いもよらない方法で、自分を持ち上げる力となる時だってあります。

マイナスが本人の力となる時まで待たず、本人の自信になる機会を奪い、挑戦する芽を摘み、本人の力となっていかない支援ばかりをしようとしているのは、私たち教員なのかもしれません。


技術革新の波がきています。

今ある当たり前は、過去の遺物となり、残っていくものと廃れていくもの。

“人工知能”という明らかな技術は、波を具現化し、未来を考えるきっかけとなっています。

しかし、変化というものは世の常で、3年先だって予想することは難しい。

わからない未来。

予想することしかできない未来。

未知なる未来に、子どもたちは歩みを進めざるを得ません。

そんな未来ある子どもたちに、私たち教員は、学校は何をしてあげられるのでしょうか。

教員は、何をイメージして子どもたちに言葉を残すのか!?

時代は常に動いています。

上司に報告したからと責任回避する力。

夜遅くまで残業していて大変な中で頑張っていると、自己犠牲を売りにする力。

教師に必要な力はそんなものではありません。

必要な力は

“先を読む力”

のように感じます。


こうしている間にも、時計の針は動き続けているのです。


心の筋トレ部

教員であり公認心理師である片野とさとぶーが「心の筋トレ」を実務で実践させていただいています✨皆さんの自己免疫力💪を上げ‼️予病に貢献できるよう、情報発信していきます✨

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