100人のプロの79人目のプロ‼️
アメリカのアルバート・メラビアンは「言語・聴覚・視覚」から得られる情報が矛盾していた場合、優先される情報は何かを研究した人。
結果、「視覚」からの情報が55%を占めていることが分かりました。
例えば
“笑いながら注意をされた”
という場合、受け手は「笑っていた」という印象が強く残るそう。
同様に、
“無表情で褒められた”
という場合は、「褒めてもらった」と解釈することは難しくなります。
言葉の内容はもちろん大切ですが、伝え方や伝える時の姿も重要ということ。
プロの方々から頂いたエールを一人でも多くの方に届けたい!
そんな思いが日増しに強くなっていた私に訪れた4月の奇跡。
講演会というチャンスを頂きました。
伝えられる喜びを感じる一方で、緊張する気持ちは隠しきれないほどに強くなります。
当たり前のように近づく当日。
最悪の事態を夢に見るほどに緊張は高まります。
貴重な場を提供していただいたこと。
心のこもったプロの方々から頂いた言葉。
しっかりと活かしきることができるのか!?
そんなことを考えながら、気分転換に携帯を開く私。
一つのデジタル広告に目が止まります。
オーダースーツのお店の広告でした。
見惚れてしまうほどの雰囲気のよさと、こだわりを感じる店主のメッセージ。
「せっかくの講演会。
最初で最後かもしれない。
記念として一着お願いしよう」
広告に導かれながら予約のボタンを押します。
店舗は、車一台が通れる道に、情緒を残した建物が並ぶ名古屋市那古野。
ゆるやかな階段を一つ、また一つと横を流れる水路を眺めながら数段登り、途中の喫茶店からコーヒーが香ります。
木でできた手すりに手をかけ、水路にいる赤い金魚と洒落た植木に目を奪われながら二つ目の階段。
最後の階段を踏み上げたところから香るアロマ。
その香りによく合う温かい照明。
まだ、そこに言葉はありません。
しかし、伝わってくる“おもてなし”の心。
入り口からのアプローチで魅了されてしまいます。
「こんにちは」
温かい満面の笑顔で出迎えてくださったのは、スーツづくり
「テーラーのプロ」田中恵介さん。
私の緊張をたくさん聞いていただきました。
心の上着を脱いだかのように、スッと軽くなった心で、田中さんのお話を伺いました。
◯子どもの頃の夢
「広告つくる人」
小さな頃からCMを見ることが好きだったそう。
だからといって、広告をつくる人を目指したわけでも、進路を考えるときに参考にしたわけでもありません。
ただ…
そのものをどう魅せるか!?
そこに面白さを感じていました。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「全て失った」
お父様のお仕事は証券会社の営業。
その影響で、田中さんは小学校を3回ほど転校しています。
転校生というのは注目を集めますが、それは良い面もあれば、悪い面も。
だから、自分が困らないよう友人づくりを真剣に取り組みます。
話しかけに行ったり、誘いを断らずに付き合ったり。
田中さんの積極的な姿勢が「協調性」を磨き上げていきました。
しかし、「協調性」を身につけたといっても、就職活動は別の話。
周りから
「すげぇ!!」
と言われたい気持ちから、有名な大手企業の試験を受けていきます。
何社も何社も。
それでも、内定の通知は一切届きません。
様々な業種を受けても、採用される気配がないことに
「自分に価値がないのでは!?」
そう感じるようになっていきました。
自分に自信がなくなってくると、決断は鈍ります。
自分に価値がないと思っていると、選択する道は妥協の連続です。
きっかけがない限り、その妥協に気づけぬまま。
最初の理想から離れた企業の試験も受け始めた頃、一つの企業から内定の通知が届きます。
安堵する気持ちと、「必要とされる」という高揚感で、打ち合わせのために伺います。
打ち合わせが終わった帰り道、一人の男性社員さんが声をかけてくれました。
「若いんだから、こんなところに入るのやめな」
ハッとさせられます。
喜んでいた内定通知書に、笑みが消えていきます。
どんな思いで伝えてくださった言葉なのか、なぜ伝えてくださったのか、未だ分かりません。
しかしその言葉に、伝えてくださったお姿に、初心を思い起こします。
男性社員さんの存在は、自らを奮い立たせ、再度挑戦するきっかけに。
そして憧れの商社へ入社が決まりました。
憧れが現実になると、そのギャップに落胆することはよくある話。
結果を出せばすぐに昇給という理想は、年功序列という壁に阻まれ、海外出張のために何度も乗るはずだった飛行機は、陸路に限定されます。
でも憧れている時には気づけない素晴らしいこともあります。
それは“やりがい”です。
お客さんとのやり取り。
苦労して達成した目標。
色々な人との出会い。
その一つ一つが仕事の魅力を気づかせてくれました。
気づけば入社してから3年もしないうちに業績はトップ。
会議の場で若手が叱咤激励される中で
「給料の5倍働いているか!?」
との言葉に田中さんは驚きます。
“5倍だけでいいの!?”
それほどに結果を残していた田中さん。
その話に私が驚くと、
「全てお客さんのお陰なんですけどね」
笑顔ですぐに謙遜します。
26歳でご結婚。
公私共に充実の田中さん。
億のお金を動かしていた仕事は、次第に日用品を“価格の安さ”だけを売りにするようになっていきました。
原因は世界的な不景気のきっかけの“リーマンショック”。
リーマンショックを受け、商品の開発を止める会社など、今の“コロナショック”と似た状況です。
商品の魅力や、持ち前のコミュニケーション力で勝負するのではなく、ただ価格だけを武器に。
一番やりたくない手段。
かつて
“5倍だけでいいの!?”
となっていた売り上げは、給料の1割しか出せない結果に。
「やむを得ない」
と環境のせい、時代のせいにしても晴れていかない心に、惨めな思いだけが蓄積していきます。
なかなか思うように結果が出せない状態でも、兆しが見え出してきた頃、会社の実験的な取り組みとしてメーカーへ出向します。
メーカー側として自分の会社の人と商談することもありました。
例え自分の会社であろうと、メーカー側として要望を伝えていきます。
自分が偉くなったわけではないのに、物言いはキツくなっていたかもしれません。
田中さんは当時を振り返り、自分の態度を反省していました。
出向の期限が満了し、本社へ戻ります。
戻った先では会議をしたがる上司が。
“仕事をしている”
というパフォーマンスのために田中さんはよく駆り出されました。
会議前に1時間かけてつくらされるグラフ。
デジタルが普及している現場でも、手書きを求められます。
全て上司の社長へのアピールのために費やされる労力。
作業が終わると「何してる!営業にいけ!」と、労いの言葉はありませんでした。
そんな仕事の毎日。
奥様と過ごす時間もありませんでした。
時間がすれ違うと同時に、徐々に心もすれ違っていきます。
“おもいやり”のはずの心は、うまく伝わりません。
奥様には惨めな思いをさせたくなかったから、明細を渡さず見栄を張って渡す生活費…。
互いを縛ることのないようにと、思いやりのための自由時間…。
困った時に、「困った」と言えたら、どれだけ楽だったか。
辛い時に「辛い」と伝えられていたら、どれだけ温かかったか。
すれ違った心は、「別れ」という選択を選んでいきました。
同じような時期、「自分の家」を失います。
ご両親の転勤で空いていたご実家を住居としていたものの、予定よりも早くご両親が帰ってくることに。
それに合わせてご自分の車を売却し「自分の車」も失います。
そばにいた仲間たちは、次々と夢を叶え経営者に。
希望に満ちた仲間たちの話に、自分だけが取り残されているような気持ちに引きずられます。
「すげぇ!」と言われたくて期待を胸に就活していた昔。
「5倍だけでいいの?」と思えるくらい結果を残してきた過去。
今の自分と向き合った時、やり場のない感情は抑えきれず溢れ出します。
それは「焦り」なのか「絶望」なのか。はたまた「憤り」なのか…。
上司から会議のためのグラフづくりを依頼され、いつものように作成します。
その途中で
「営業行け!」
と言われた田中さん。
自身が書いてきた紙をグシャグシャにして、投げつけます。
それがどうなっていくのか!?
その後、どんな道があるのか!?
未来を考えるほど、田中さんにゆとりはありません。
ただ、現状から抜け出すように、会社を辞めます。
貯蓄や、副業などの安心材料は一つもない中、自分が何をしていくのかを模索します。
新しい白い紙に、自分を書き出してみます。
何ができるのか。
何に挑戦できるのか。
書いて、書いて、書いて。
違うものには、線を引いて。
残ったものは、ウォーターサーバーの代理店、ペットの糞をバイオで分解する会社、そしてアパレル。
その時、一番惹かれたのがアパレルでした。
アパレルの中でもスーツに心が湧きます。
スーツは、会社に勤めていた時から着ています。
何がよくて、何がよくないのかを見る目は養われていました。
気づけば縫製工場や生地屋さんに連絡を。
心がときめく時、時間はかかりません。
たった2週間で全ての準備が整いました。
店の名前は
「DEFFERT/デフェール」。
「DEFFERT」のテーラーは田中さん。
唯一無二のテーラーがいるお店です。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「“テーラー”って言ったらかっこいいんだろうなぁ」
「オーナー業やってみたい。
組織つくってってのもいい。
将来のためにと考えている先生もいいなぁ。
テーラーはいい仕事だと思う。
人の人生に寄り添っていけるから。
皆さんはなんておっしゃっているんですか?」
ユニークに答えながらも、テーラーの話になると真剣に。
テーラーは田中さんが出逢うべくして出逢えた職。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「1冊の本を自分の人生に例える」
落ち込んだりする時も、
「小説にすると、今はクライマックスなのかな」と思うそうです。
今起きていることは、序章なのか、クライマックスなのか。
ハラハラ、ドキドキ、手に汗を握るような面白さを体験するには、ただ前に進むしかありません。
まだ、結末ではない自分の人生。
人生をドラマチックに。
◯未来ある子どもたちへのエール
「明るく、元気に、楽しく過ごしたもん勝ちです。
自分を信じて楽しむしかない。」
田中さんが商社マンとして営業に伺う時、決断できる立場の人に時間をとってもらいます。
もしあなたなら、忙しい時間に手を止め、今やらねばならぬことを後回しに時間をつくろうと思うでしょうか?
ドラマで見たような、“ご飯をおごる”“プレゼントする”などは、認められない社会ですし、相手側も嫌がる時代です。
「会ってよかった」
「話してよかった」
お金ではなく、人間力でそう思ってもらうためには…。
嫌々ではなく、楽しそうに。
やる気なさそうな挨拶ではなく、元気に。
暗い返事ではなく、明るく。
田中さんが大切にしていることです。
同じ物事でも、その結果の違いは明確です。
まずは一つでも取り組めたら。
そこから、変えられるのは未来です。
◯インタビューをして
注意をする方は、その子の改善を期待して“その子のために”と行います。
注意をされる側は、素直に聞ける子もいれば、少し反発したい子もいたり、誤解を訂正したいと思っても上手く表現できない子もいます。
その子どもたちの心を上手く汲み取れる時は、何も問題なく流れる風のように、過ぎ去っていきます。
汲み取れない時、改善しないことに執着し続け「子のために」という大義名分が振り返る目を隠していきます。
何度も。何度も。
同じようなことを注意され、子どもが嘆きます。
まるで監獄かのような学級に、監守のような担任に、
「耐えられない」
と嘆きます。
…
しかし、現状に甘えているのは誰でしょうか。
予測不可能な未来に怯えて、行動に移せていないのは誰でしょうか。
成績を気にし、顔色ばかりを伺う。
そろそろ、そんな自分から脱してみてはどうだろうか?
人生は一度きり。
妥協する時間なんて、もったいない。
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