100人のプロの12人目からのエール‼️
車で走っているとオシャレな雰囲気のパン屋さんがありました。
用事があったため一度は通り過ぎ、「帰り、もしまだ営業されていたら買ってみよう」となり注意して帰り道を走ります。
「よかったぁ」
私たちが一番最初に訪れたのは夕方でした。
食べたことがなかった「カンパーニュ」のお店。
何を注文したらいいか分からず、お店の方に伺うととても気さくに丁寧に教えて下さった方がいました。
その方は「カンパーニュのプロ」Iさんのお母様です。
お母様から受け取ったカンパーニュは、まだ焼きたてで温かかったです。
急いで帰って、パンの端をぎゅっとちぎり頂きます。
「おいしい!」
私のカンパーニュを頂いた第一声です。
カンパーニュの中身は「黒豆」でした。
甘過ぎず、硬すぎず…
顔よりも大きなカンパーニュを気づいたら残り8分の1に。
優しくてあったか〜くて美味しいカンパーニュをつくるIさんへのインタビューはお母様が繋いで下さいました。
「今、お話を伺いたいと来て頂いているんだけど…そっちにいったらいい?それともこっちにくる?」
私たちの突然のお願いにも関わらず、耳を傾けてくださり、「インタビューやめとく?」と怪しむこともせず。
また、娘さんであるIさんも翌日の準備で特に忙しい日だったにも関わらず。
お母様といい、Iさんといい…本当に、本当に有り難いです。
と〜っても忙しい中で、私たちのインタビューに答えて下さったIさんのお話です。
◯子どもの頃の夢
「警察官」
実際に大人になって就いた職業は「刑務官」でした。
私はあまり刑務官のお仕事を知らなかったのですが…
「刑務官」は刑務所などで更生や社会復帰のための指導を行うお仕事らしいのですが…
実際、自分の一言が自殺につながってしまう危険性の方がいたり、取っ組み合いの喧嘩を始める方がいたり…毎日、必ず何かは起きる!
という現場だったそうです。
その環境下で15年もお勤めされました。
警察官を目指していたこともあって、柔道、剣道、空手と様々な武道をたしなんでおられました…
声のトーンやお話の仕方からは想像できないスポーツばかり。
しかしながら、動きの機敏さや所作には武道を感じさせるものがあります。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「できたてのパン」
刑務官の時「教員」になりたいと感じ、刑務官の後に「法務教官」になられたみたいです。
刑務所などにいる方が円滑な社会復帰を図るための教育をして下さる職業です。
私は、刑務官も法務教官も全て「警察官」の方が行っていると思っておりました。様々な領域に様々な方が活動して下さっていることで、世の中は回っているのだなぁと改めて感じました。
しかしながら、Iさんのお仕事はとても神経をすり減らしていくお仕事でした。
「楽しかった」
と「やりがい」を感じる一方で、同時に妥協が許されない中でのお仕事は、徐々に目には見えない疲れが蓄積していきます。
そんな蓄積したある日のことです…
「死にたい」
と思うようになりました。
「死にたい」という感情のまま、あるパン屋さんに入りパンを購入します。
パンは「できたてのパン」。
その「できたてのパン」がIさんを救います。
食欲を満たすだけでなく、生きるエネルギーもくれました。
…
「生きよう!」
「できたてのパン」はそんな思いにさせてくれ、
「死んだつもりでもう一度」
と思わせ、Iさんとパン作りの出会いになりました。
未だに生きるきっかけをくれたパン屋さんには行くそうですが、
「自分のパンがIさんの生きるエネルギーを与えたとは全く想像もしていないと思う」
とおっしゃいました。
ストレス発散のためにパンを夜な夜なつくり、できたパンを職場の方や周りの方に差し入れたりするようになっていきました。
いつしか、Iさんのパンが評判に。
それと同時に、
「パン屋さんやりたいなぁ!」
そう感じるようになっていきます。
この想いが色々な人を繋いでいきます。
ご両親のお力、ご友人のお力、ご家族のお力…
一つ一つの力が今のパン屋さんになっていると、Iさんは感謝の気持ちを込めながら私たちに教えて下さいました。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「ん〜…旅行の添乗員になってみたいです。世界の。」
マスク越しでも分かる笑顔で優しく答えてくださいました。
色んな国の色んなことを知りたいとおっしゃっていました。
探究心、好奇心そういったことが高い方なのだと改めて思いました。
今のパン屋さんも一つの場所で店舗として販売しているだけではなく、地域の催し物があるとそこへ移動して販売をされるスタイルです。
そういうスタイルも、Iさんならではの探究心から来るものなのかも知れません。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「頑張れば明日上手くいくかもしれない」
こうおっしゃいました。
お仕事して、上手く行かなかったらそれは「勉強不足」。
だったら勉強すればまた一つレベルが上がっていく…
明日をまだ誰も体験したことがない訳ですから…
予想やイメージはしても全く予想通りでも、体験するのとは全く違います。
今の自分が少しでもレベルアップすれば、もしかしたらステキな明日を体験できているのかも知れません。
今日という日が冴えなければ、レベルアップするチャンスってことですよね。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
ん〜…
と言って少し考えた後、唐突にパンの話が始まります。
しかしその話は、間違いなく力強いエールでした。
…
「カメ吉って知ってます?
亀の形をしたパンなんです。
同じようにつくるんですけどねぇ…
どうしても、首が長かったり、顔が変なふうになったりするのがあるんです…
でもね…
そういう子たちの方が早く売れていくんです!」
パン屋さんならではの言葉で深い、深いエールを頂きました。
カメ吉の不揃いは「個性」。
「今は個性の時代」とIさんもおっしゃっていました。
それを統一させようとすることが「教育現場」なのかなぁと反省をしたりもしました。
苦手な教科を得意な教科よりも優先して取り組ませようとしたり、基準をみんなにして、「みんなはなんと思うか!?」「周りになんて言われるか!?」そんな周りの視点を意識させようとします。
個性のない子を育てようとするのは、まさしく面白味のないことだと思います。その子にしかない「個性」。
ロボットではない、人が育てるからこそ、それが「味」になっていくんでしょうね。
◯インタビューをして
Iさんはパンを愛しているように感じました。
「カメ吉」の話も「そういう子」と表現してたり、まるで我が子のように。
イースト菌をつくる工程は育児と一緒と教えて下さいました。
力づくでねじ伏せようとすると反発し、イライラしていると膨らまなかったり…
つくっている時に「美味しく食べてもらってねぇ」と気持ちを込めてつくるそうです。
機械には作れない、あったか〜くて、優しい味のするカンパーニュは、「心」を大切にする優しい方が「心」を込めて、大切につくっていらっしゃいました。
ごちそうさまでした。
また、頂きます。
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