100人のプロの15人目からのエール‼️
私の母は食の好みがとにかく難しい人。
ちょっと気になるから〜と街で買ってきたケーキは必ず喜びません。
「あ〜」と言って少し残念そうなため息。
そんな母も、あるケーキ屋さんの「チーズスフレ」は喜びます。
「チーズスフレが好きなのでは!?」と思い、他のお店のものも買ってきたりもするのですが、「美味しい」とは言ってくれません。
いつものケーキ屋さんは…確かに美味しいんです。
今回はそこの「パティシエのプロ」Sさんにお話を伺うことができました。
Instagramでお願いしたところ、スタッフの方がSさんに繋いでくださり、今回のインタビューが実現しました。
スタッフの方の対応にも感謝です。
15年前からあるそのケーキ屋さん。
何度か通ってますが、実際にSさんとお会いするのは初めてです。
インタビューのお願いをする際に、Sさんから、
「僕の仕事ってある意味で『根性論』みたいなところがあるから、今の時代とは合わないし子どもたちにとって参考になるか分かんないよ?」
そんなふうにおっしゃっていました。
従業員の労働時間を守るために、ご自分は4時30分に出勤しているとのこと…。
そんな早朝にもお仕事をされているSさんに20時くらいまでお話を伺わさせて頂きました。
◯子どもの頃の夢
「何もなかった」
プロの方々にお話を伺っていると、「子どもの頃の夢はなかった」と答える方が多くいらっしゃいます。
「夢を持たないと」
なんて言葉、教師をしてますと沢山言っていたように感じます。
夢を持たないといけないかのように語ってしまっている時もありました。
Sさんは、「夢もなかった私が参考になりますかね」とおっしゃっていましたが…
プロとしてご活躍をするSさんのお話は、教師である私たちにとって、大切なことを気づかせてくれています。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「実際に見に行ったことはあるのか?」社長の言葉が決心させました。
中学生の頃には何もやりたいことはなかったのですが、高校を卒業する頃にはある程度方向性を決めていく必要があったため、Sさんは親御さんと相談して、
「手に職」
それがキーワードとなって、シェフの道へと進んだそうです。
調理について学んだ後、フランス料理のシェフとして就職します。しかし、入社してすぐにバブル崩壊。
客足が遠のいていったこともあり、一旦レストランは閉めることに。
「カジュアルなフレンチ」をテーマに新規オープンする際、Sさんに声がかかっていたそうですが、Sさん自身熱が冷めてしまっていました。
フレンチの後の人生をどうするのか!?
またしても人生の選択を求められる場面。
Sさんは親御さんと相談をします。
以前から興味のあった「お菓子屋」さんへの道を進むことになりました。
パティシエとしての第一歩は、ケーキのスポンジやブッセなどを作る工場勤務でした。
すごい量を毎日作っていましたが、そんな中で違和感を感じるようになっていきました。
実際に食べる人の顔を見ることができません。
流れ作業の中で、もっとスキルを身につけたいと思うのですが…
「あなたの先輩がまだそれを習得していないので、教えられません」
と言われてしまいます。
やむなく退職します。
スキルアップを求めて、名古屋のケーキ屋さんに就職します。
が、またもや工場勤務に。
しかしながら、3年間の工場勤務で徐々に横の繋がりができてくるようになってきました。
「実際に買って行く人たちを見たい」
そんな気持ちがドンドンと高まっていき、工場勤務を退職します。
横の繋がりで東海市のケーキ屋さんを紹介してもらいます。
そこでは…
「なぜこうやってつくるのか!?」
そう言う感覚が大切になってくる場でした。
流れ作業で「業務」としての感覚が強かった工場勤務の一方で、お店では「仕事」としての感覚に変化していきます。
東海市のケーキ屋さんでは、とにかく激務だったみたいです。
シーズンになると、深夜12時に帰るのは当たり前。
精神的には充実をしていたのですが、肉体的にはとても辛かったそうです。
4年半勤務しましたが、激務の中でしっかり睡眠も取れていなかったため、免疫が低下して大病を患ってしまいました。
結果的に入院を余儀なくされてしまいます。
少しした後、勤務先の東海市のケーキ屋さんの社長も同じように入院してきました。
シーズンの時のケーキ屋さんの多忙具合がこのお話からも伝わってきます。
同じ病棟でSさんの次なる挑戦について社長とお話しすることができたそうです。普段なら、忙しさからなかなかそのようなチャンスも訪れないかもしれないのですが…
その一つ一つの出来事が良い機会になっていったように感じます。
次なる挑戦として、自分のお店を!と言うことなのですが、今の職場を辞めて、新しい視点で別のお店で学びたかったそうです。
辞めることはできたのですが…
最後の就職活動がスムーズに進みません。
「就職先がない」
そんな状況で、一つのケーキ屋さんから声がかかります。
「石川県」のケーキ屋さんでした。
石川県…遠い
という印象から断っていたのですが、待てど暮らせど他からの情報はありません。
どうすれば良いのか!?と一緒に入院をした社長の元を訪ね相談します。
「お前はそこに行ったことがあるのか?」
「ありません」
「行った事がないのに何がわかる?」
その言葉に決心がつきます。
最後の就職先はリニューアルオープンに向けてスタッフを募集していたところでした。
石川県はお殿様に献上するお菓子が昔からあったと言うことで、甘いものを食べることが県民の方の生活の一部になっていました。
なので…
ケーキの売り上げも凄まじい量で、同時につくる量も凄まじかったそうです。
社長のアドバイス通り、そのケーキ屋さんの修行で学んだことはとても大きいものとなりました。
その時くらいから、お菓子のコンクールにも参加するようになったらしく、賞も受賞するようになっていきました。
様々な挑戦が、今の独立への道へと歩む「力」となっていきました。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「何かつくっていたい」
そうワクワクしながら教えて下さいました。
賞を受賞した際の作品がお店にも飾られているのですが、とても丁寧で「お菓子」でできているとは思えないものでした。
つくり方も伺ったのですが、「簡単です」とご謙遜を入れながらの説明でしたが、時間や決断のスピードが求められる複雑そうなものでした。
「知らないことを知っている人の話が好き」
自分の地位を確立したSさんであっても、常に自分を高めようとしている姿が伝わってきました。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「あー」と言うそうです。
大きな声を出すことで意識がそちらへと向かうので、大きな声を出していたそうですが、徐々に「あー」と言う言葉に行きついたそうです。
落ち込んでいても前に進まない…
けどそれについてぐるぐると頭の中で思い続けてしまうので、声を出して切り替えることをしていったそうです。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「長所をいかに伸ばすか!?
伸ばしていけたらベスト。
やれることっていっぱいあるからね。
努力していけば、何とかなることもある。」
私たち教育現場では、やれないことに目を向け、それがやれるようになることに注視してしまいます。
しかし、そのことが本人のためになるのか!?と聞かれれば堂々と胸を張って「なります」とは言い難いことが多いように思います。
長所を伸ばし、伸ばすための努力をすることの大切さに気づいてもらえたら…
そんな支援を「学校」が行えたら…
私たち自身にも頂いた言葉のように感じました。
◯インタビューをして
シェフがお話して下さった事でとても印象的な出来事がありました。
中学生の頃ハンドボール部だったのですが、「背が高い」と言う理由でレギュラーだったそうです。
しかし、試合中に外されてしまいます。
「まぁ…実力が足りなかったのか」
「外されるなんて、プライドが傷ついたからもう真剣にやりたくない」
そんな発想をする子は経験上、多くいたりするのですが…
Sさんは違います。
その日から自主的なトレーニングが始まります。
毎日。
学校から帰ってきたら、晩御飯までの時間を学校へ戻り、シュート練習。
晩御飯を食べたらランニング。
その結果、もちろんレギュラーの座を掴み取りますし、ランニングの成果もあって、その後マラソン選手にも選抜され上位10位以内に入りました。
「運動神経がいい」
「ケーキをつくる才能がある」
そんな言葉では片付けられない努力をSさんはしていました。
「人がやれて自分ができない。それが努力で補えるのなら、努力をしたい」
Sさんのケーキを美味しいと思い続けることができるのは、今もなお「美味しい」を探求し「努力」し続けているからだと思いました。
つくり手の想いを知った後に食べるケーキは、今までで食べてきたものよりも遥かに美味しかったです。
追記
Sさんの事を伝えようと思っても、何か、、、
何か…何か足りない。
もっと膨らませながらSさんを語りたかったにもかかわらず…
インタビューの内容はまとめたし、必要項目は書けている…
まるで…塩のないシュークリームのようなまとめ方…
シュークリームをつくる際に塩を使用しないとどうなるか知っていますか?
材料を揃えてても、「甘さ」とは正反対でありながら、「甘さ」を最大限感じさせてくれる「塩」がなければシュークリームのシューは膨らみません。
この話はSさんから伺った話です。
そう。
この話を語らなければ、シュークリームのシューづくりに塩を入れ忘れたように、大切な調味料を忘れたインタビューになってしまいます。
Sさんがなぜ「塩」の話をされたのか…
それはSさんがケーキ屋さんでの修行中、先輩に怒られた時です。
怒られることは日常茶飯事。
その時に「同じミスは何度もしてはいけない」
と言われていたのですが、
「逆に同じミスでなければ沢山、学ぶことができる」と考えました。
実際にシュークリームをつくる際に「塩」を入れ忘れた時、シューが膨らまないことに気づけました。
「なぜこうやってつくるのか!?」
をちゃんと理解することができました。
怒られないように、ミスをしないように仕事をするのではなく、ミスをどう自分に生かしていくのか!?
ミスをするからいけないのではなく、そこから学ぶことができるチャンスと捉えること…
これはSさんの底なしの好奇心。
美味しいケーキを求めて、一人で東京へ行くことも。
本場の洋菓子を知るためにフランスへ行くことも。
Sさんの探究心はまさにプロフェッショナルです。
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