100人のプロの17人目からのエール‼️
「あの人は木と会話ができるんです」
そんな風に「家づくりのプロ」Iさんに紹介して頂いた今回のプロ。
「造園家のプロ」Tさんです。
インタビューをお願いしたところ、
「未来の宝のため」
と快く引き受けて下さいました。
Tさんと打ち合わせをすると、本題はそっちのけで日常の話をざっくばらんにしたりします。
Tさんの笑い方は豪快で一気に周りの雰囲気を明るくしてくれます。
一方で、庭木などに関してはとっても繊細で、一つ一つに愛情を込めています。
庭木のことの話をする時、「あの子はね…」そんな表現で植物のことを話します。当たり前なのですが、生きているんだなぁと私自身が再認識させてもらっています。
Tさんと出会ってから、庭木に対する接し方が変化していました。
枯れそうになっている子を見ると心配し、声をかけたりして新芽が出てきたり、回復して緑が濃くなってきたりすると「ホッ」とします。
今もなお、植物との出会いの場を提供してくださっている「造園家のプロ」Tさんのお話です。
◯子どもの頃の夢
「医者」
小学生の頃は習い事をとにかくしていたとか。
毎日何かの習い事がある日々を過ごしていました。
ご家族の皆さんがTさんへの学習にかける熱量も高かったみたいです。
中学受験も考える中で、ある気づきが…
「勉強…好きじゃない」
それに気づくと医者への目標もなくなってしまい、その後は特に何かになりたい!という思いは無くなっていったそうです。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「お義父さんからの言葉」
そろそろ進路を決めなくてはいけなくなった高校生。
お母さんが喫茶店をやると言うことで打ち合わせを何度かしていた中学生の頃を思い出しました。
インテリアを決めたりすることがワクワクしたこともあり、インテリア関係の専門学校へ。
しかし、実際にインテリアを学ぶ中で特にピンとくるものがありませんでした。
何気なく「ピーターウォーカー」さんの雑誌を見ます。
ピーターウォーカーさんはランドスケープ(風景)デザイナーです。
雑誌には公園の設計とかが紹介されていました。
それを見た時にビビッときたそうです。
卒業制作は公園をつくっていきます。
その卒業制作は「インテリア」と言う観点での審査が難しく、審査の基準が定まらないことで順位も付けづらい。
でも、評価には値する!ということで…「特別賞」という形で評価されました。
その後、Tさんの母校である専門学校は「ランドスケープ科」というものができたそうです。
Tさんの功績と言っても過言ではありません。
専門学校卒業後は「造園業」のところに就職します。そこでは先輩からコンピュータを与えられ、夢中になって自分のスキルにしていきました。
その甲斐あって、難しい仕事をどんどん任せられるようになっていきます。Tさんは先輩のことを能力の高い先輩と言っていました。
目の前のことを真剣に取り組んで仕事をこなし、プライベートでは同じ会社で知り合った方と結婚をします。
奥さんのご実家も造園業のお仕事をされていたので、そちらへと転職していきます。
子宝にも恵まれマイホームも建て、全てがTさんの努力も相まって、順風満帆にいきます。
しかし…
しかし、外見から上手くいっているように見えても、ただ一つ…
ただ一つTさんにとって重要なものが欠けていたそうです。
それは自分自身の「存在意義」でした。
マイホームを建てる際に、自分の意見を取り入れてもらっているという実感がなかったそうです。
「魔」が差してしまったのかもしれません。
最初は「かもしれない」から徐々に気持ちが膨れ上がり「自分の居場所はない」とまで感じるようになってしまいました。
耐えきれなくなったTさんは家を飛び出します。
二度とその家に戻ることはありませんでした。
どう感じているのか!?言葉なき声に耳を傾けることはなかなか難しいものがあります。
自分の心の居場所を求めていきます。
それが仕事なのか…恋愛なのか…
とにかくガムシャラに。
再就職はリフォームを主な仕事とする所でした。
仕事に打ち込んでいくうちに、営業成績はトップになり結果を残していきます。
にも関わらず…社長と関係が良くなく、左遷されてしまいます。
Tさんのことです。それでも目の前のことを真剣に取り組んでいきます。
左遷とは言っても責任者だったため、営業所にかかってくる電話は各営業所の方が電話を取ります。
なので、どこかの営業所に「Tさんいる?」と連絡してきてもなかなか繋がることはありません。
家を飛び出してから3年の時が流れた頃、偶然Tさんがいた所の電話が鳴ります。
その電話にたまたま出ると、前の奥さんのお義父さんからの電話でした。
造園の仕事をTさんを指名して依頼してきたそうです。
それきっかけにちょくちょくと依頼があったそうで、お義父さんから…
「お前を手放したことを後悔している。お前が独立するなら全面的に協力する。」
そんな自分を認めて下さる言葉をかけて頂きました。
それが今の会社を立ち上げるきっかけになったそうです。
「造園家のプロ」としてのTさんの誕生です。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「仙人」
全てのしがらみから一切解き放たれて、自然のまま生活をしたいとおっしゃっていました。
「この仕事はいつ終わるかわからない。一つのミスが会社を潰すことにもなりかねない」
そんな風に緊張感を持たれたお話をして下さいました。
自営されている方はその緊張感をもとにお仕事をされていると思います。
今の仕事からも解き放たれたいと言ったにも関わらず「自然に囲まれていたい」とおっしゃるその姿に、植物への愛が溢れていました。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「落ち込む原因をベルトコンベアーに置くイメージで考えることをやめる」
Tさんは膿が出るくらいに悩むそうです。
とってもリアルな表現でした。
しかし、最近はベルトコンベアーに置くようなビジュアルをイメージするそうです。それをすることで、物事を俯瞰して冷静に自分を見ることができ、また自分の頭の中を整理することができるそうです。
Tさんのお仕事は天候によっても左右されてしまいます。
自分ではどうしようもない問題も出てくる中で、俯瞰してみることは必要になってくる力なのかもしれませんね。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「特別な力を持っていると思って、自信を持っていいと思います。
自分しかできないことがある。できないことも個性。
できることを引き上げたらスーパーマン。
選ばれたヒーロー。」
自分自身の存在意義を見出せなかったTさんが、今は誰もが圧倒されるような庭を造ります。
自分を信じられるか!?どうか。
誰かに承認されることよりも、自分自身が自分の存在に価値を見出した時、無敵の力を発揮するように感じました。
◯インタビューをして
お客様の所に植えに行く植物たちは自分の子どものように大切に想っているとおっしゃっていました。
Tさんの水やりの現場を一度見たことがあります。
片方の足に体重を乗せた姿ではなく、両方の足でしっかり立ち、木自身を見つめながら水をあげていました。
葉っぱにかける際も細かく丁寧に。
ある意味で、事務所で打ち合わせをする時のTさんよりも水やりの時の方が口調が柔らかかったりします。
庭の世界にもコンクールがあります。
Tさんは積極的に参加しています。
その参加の目的の一つに、今は離れている子どもたちに少しでもエールを送りたいという気持ちがあるそうです。
子を思う優しい気持ちが、「造園家」としてのTさんの力を引き出しているように感じます。
幕末の吉田松陰先生の言葉を借りるのであるのなら…
「親思う心に勝る親心」
なのかもしれません。
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