100人のプロの22人目からのエール‼️
久々にシフォンケーキが食べたくなりました。
私がシフォンケーキを食べる時は、必ずある地元のコーヒー屋さんで頂きます。
社会人になりなかなか伺うことができていなかったのですが、遠方から知人が来ればそのコーヒー屋さんに。
なぜ!?
それは「通」の顔ができるから。
「常連さん」というほど通えていないのですが…
お店の雰囲気、淹れたてのコーヒーはどこのコーヒー屋さんよりもお薦めです。
連れられた知人は
「すごいオシャレですね」
と小さな声で発し、背筋をピンと。
一口一口を味わっていました。
初めて来た時から10年以上経っていても、お店のオシャレさは健在。
味も間違いありませんでした。
社会人になって、コーヒーを飲む機会は断然増えて、なんとなく味の違いが分かるようになった今も、ここのコーヒーは美味しいです。
久し振りに食べたくなったシフォンケーキと共に、ぜひともインタビューをさせて頂こうとお願いの電話を。
思いも寄らぬ言葉が…
なんと!コーヒー屋さんはご主人の体調も考えて8月いっぱいで一旦お店を閉めると言うのです。
行く度にお客さんで賑わいを見せていたのですが…
そんな中でもインタビューについては快く引き受けて下さいました。
「コーヒー屋さんのプロ」ご主人と奥様のSさんの最後のコーヒーを頂きに伺いました。
◯子どもの頃の夢
「美容師」
ご主人は特に夢というものはなかったらしいのですが、Sさんは美容師を目指していました。
手に職を!
という気持ちで美容師だったみたいです。
学校は「東京!」と思っていたそうですが、鎌倉の寮のある美容学校へ通うことになりました。
オシャレの中心地に行きたいと思っていたSさん。
しかし、鎌倉の学校での環境下が「今の自分をつくっている」と結果的に良かったみたいです。
学校卒業後は大阪の勤務になることが決まっていました。
でも、Sさんのお母様が離れ離れになることを寂しく思ってたことを知り、お母様と一緒にいることを選択します。
もし美容師の道を歩んでいたら、今のコーヒー屋さんはなかったのかもしれません。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「妥協のないセカンドライフ」
ご主人が外でコーヒーを飲むことが好きでなかったこと。
Sさんは紅茶派であったこと。
その二つがあるのに、なぜSさんたちは
「コーヒー屋さん」
を選択したのか!?…
それは未だに分かりません。
ただ…
旦那様は人とのコミュニケーションを苦手としているから、コミュニケーションを特に必要としないもの…
「コーヒー」なら、頂く時はマスターとお話しするのではなく、自分の空間を大切にするようなイメージだったりします。
それにSさんは、ちゃんとお客さんの顔を見て、一つ一つ丁寧に提供していきたい!
その気持ちが強くありました。
ご主人の定年退職をきっかけに「コーヒー屋さん」のプロジェクトが始まっていきます。
ご主人は元々ダンプカーの運転手だったそうです。
「手先が器用だから」とか「人と関わることが大好きで」ではないそうで…
でもコーヒーを提供するのだからしっかりと勉強したい!その思いで東京へ専門的な知識を学びに行きます。
研修を少し受けに行くというレベルではなく「学校」へ入学します。
ダンプカーの職場の定年退職が他の職業と比べ少し早い…
とは言え!50代になってから全くもって新しい世界に入りに行くというバイタリティがすごい!
私が好きな「シフォンケーキ」もパン教室に通って基礎を身につけた上で提供されていました。
私は午後のお茶の時間として利用させて頂いていたのですが、Sさんのコーヒー屋さんはモーニングもやっていました。
モーニングで提供するパンや、パンに塗るジャムなど全てが手作り。
頂いたことがなかったアイスクリームもとっても評判が良かったみたいです。
私たちの目の前に一杯のコーヒーがあります。
夕方にお邪魔したので、辺りは月の映える暗さとなってきました。
お店の明かりはモダンな色でより一層、雰囲気を演出してくれています。
コーヒーの横に出されたお菓子があります。
ご主人がつくった最後の「生チョコ」。
一つが、小さく上品に。
食べたいけど、しっかり味わって食べたいと思い、お話を続けます。
「趣味として始めたのですか?」
この質問は、私の「なぜコーヒー屋さんだったのか」の謎をさらに深めました。
「いいえ。ちゃんと借金を負ったのよ。」
退職してゆっくり過ごすことも一つの可能性ではあったのですが、そうはしなかったのです。
元々他の市に住んでいたのですが、Sさんの地元に良い土地があったと言うことで家族で移り住みます。
そこでコーヒーを提供できることを考えた住居兼店舗の建設が始まります。
中のインテリアにもこだわりました。
オーダーメイドで椅子をつくってもらったり、中の棚などもアメリカのシアトルで買い付けに行ったり…
Sさんのお店はお客さん一人一人に合わせたコーヒーカップで提供して頂けるのですが、そのカップたちも日本全国色々な所に行って集めたとのこと。
その際にSさんは色んなコーヒー屋さんを周り勉強されたとか。
全くもって全てがスタートだったのです。
Sさんの言葉がとても印象的でした。
「計算ずくじゃあ楽しくない」
お店に伺うとお水とおしぼりが出されますが、お水の入ったグラスは「Baccarat(バカラ)」で提供されます。
お水は世界最高峰のろ過機を使用しています。
「私たちが満足しているかどうか!?」
自分たちが満足していないのに、お客さんに満足を求めることはできないというこだわり。
一杯のコーヒーに使うコーヒー豆も他とは全く違って、こだわりのある量をしっかり使用していました。
「お金」を中心に考えず、ポリシーを持ってコーヒーを淹れるSさんたちは、私たちにこんな教訓を教えてくれました。
「お金を使った分、お金が入ってくる」
出費しなければ、収入はない。
行動しなければ何も始まらない。そのような意味に私は聞こえてきました。
コーヒー屋さんが目標ではなかったのかもしれません。
「人生を楽しむため」にコーヒー屋さんを選択したように感じました。
旦那様だけでお店をやっていく想定をしていたSさんでしたが、思った以上に来店して下さる方々にSさんも、お店のプロデュースだけではなくなっていきます。
こうして今のスタイルが出来上がっていきました。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「100%やりきった」
好きだったコーヒー屋さんを引退して、次にやりたいと思うことはやはりないのだと思います。
それだけ、お店に誇りと愛情があったからですね。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
ご主人:寝ること
Sさん:あまり考えない
お店を営んでいると大変なことは沢山あるそうです。
しかし…それを考え引きずってしまっていては、せっかくコーヒーを飲みに来て下さるお客さんに申し訳ない。
だから、お店に入ると自分の全エネルギーをお客さんに注いでいくとのことでした。
絶えず笑顔で接して下さっていた印象がとても強く残っているのは、Sさんたちのこだわりが、私たちのためだったからかもしれません。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「みんな性格、環境が違う。
一つでいい。
頑張れるものを見つけたら幸せ。
一筋になれた時、頑張れるから。」
命もらった以上は必ず自分の「持ち味」がある!と断言されていました。
みんなと自分を比べて劣っている所に目を向けるのではなく、自分が頑張れるものにこだわりを持っていくのはとても大切なことだと思います。
「これをやっていると心落ち着く」
「この時間はワクワクする」
そんな自分のシグナルを大切にしてもらえば、自然と頑張れるものが見つかっていくと思います。
◯インタビューをして
Sさんたちの優しさに甘え質問ばかりをしてしまいました。
せっかく頂いた「生チョコ」。
楽しみにと、とっておいた「生チョコ」。
掴もうとすると、少し溶けかかってて。
「最後の」と思うと、口の中で溶かし切ってしまうことがもったいなくて…。
頂いたコーヒーでその味を流してしまうことがもったいなくて…。
未練あふれる私たちにご主人は
「またつくってやるよ」
私たちに淹れて下さったコーヒーの道具を見つめながらおっしゃいました。
ご主人とSさんは、お店の引退も妥協していません。
自分たちの求める理想像に少しでも満たしていなければ、自分たちが満足していない状態。
そのような状態でお客さんを迎え入れることはできないと思ったのかもしれません。
お店の名前は植物の名前でした。
とてもオシャレなお店にピッタリと当てはまるお名前。
その植物の花言葉は
「光」
でした。来て癒しの場所となるための「光」であり続けた20年以上の歳月は、一片の妥協もありません。
20年以上もの長い間、臨時休業を2回しかしたことのないそのスタイルは、看板で掲げる植物のもう一つの花言葉に、ポリシーを持っているように感じます。
「あなたをお待ちしております」
またSさんたちのコーヒーを飲める時を楽しみにしています。
0コメント