100人のプロのの24人目からのエール‼️
「いつかは実家を建て替えたい」
そんな気持ちが雨漏りする頃からありました。
「いつか」は「いつか」で、本気で取り組まないと「いつの日か…」に変わっていってしまいます。
しかし…
思い続けることは大切です。
その「いつの日か」のチャンスが来た時にしっかり
「チャンス」
と捉えて行動ができるから。
願わなければ、願いは叶いません。
私の実家を建てて頂いた大工のIさんとお弟子さん。
「1人目のプロ」で紹介させて頂いたIさんの設計の元、大工のIさんが建てていきます。
私が想像していた大工さんよりもウンと若く、普段は笑顔が素敵なIさんですが、お仕事されている時の眼力は凄まじかったです。
幸せなことに実家の隣に新しく実家を建設していたため、私が出勤、帰宅する度にお会いすることができていました。
帰宅する時には挨拶を交わす毎日。
「帰ればいて下さる」
そんな安心感がありました。
真剣にお仕事をされているので、沢山お話を伺いたかったのですがグッと控えて…。
完成した家は細部にわたって匠の技が光っています。
パッと見、気付けない所に工夫が散りばめられていて。
主張し過ぎない、でも快適に過ごすための工夫。
その技はお弟子さんに継承していく目的もありますし、もちろん!住む人のためにと時間をかけてくださった技。
「伝統継承のプロ」Iさんにじっくりお話を伺いました。
◯子どもの頃の夢
「いい家に住みたい」
子どもの頃は借家だったそうです。
Iさんの子どもの頃は「貧乏だった」そうです。
お母様は看護師としてお仕事をされていましたが、お父様はなかなかお仕事が続かなかったとのこと。
しかし、お父様は子どもたちに対して愛情を持って接してくれていたそうで、ご家族は円満でした。
同時に働き続けるお母様に対して
「楽させてあげたい」
そんな思いをずっと持ち続けていました。
ある日のことです。
親戚の方が家を建てると言うことで、餅投げがありました。
今はほとんどそういった風習がなくなってきていますが、いい風習だったと思います。
近所の人たちが寄ってきて、施主の人たちが餅を投げたり、五円(ご縁)を投げたり…
その投げられたものを参加した人たちで受け取っていきます。
「幸せのお裾分け」のようなイメージでしょうか。
私も子どもの頃に行った際は、投げられた餅をキャッチするのは大人に勝てなかったので、落ちているものを誰よりも早く拾おうと頑張っていました。
その場にいる人たちみんなが笑顔で過ごします。
そんな風習。
Iさんは餅投げに参加する中で、親戚の家を眺めます。
「こんな家に住みたいなぁ」
まだ棟上げの時ですので、屋根や柱があるだけでの状態。
それでも子どもの頃のIさんには、建っていく家の様子を想像するのに充分でした。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「ハングリー精神」
「お母さんを楽させたい」と思っていたため、高校進学はせずに就職の道へと進んでいきます。
お母様に相談した時、
「技術は誰も奪うことができない」
とアドバイスをもらい、小さな時から興味のあった「大工」の道を選択します。
私の兄と同じくらいの年齢。
その当時も高校へ進学する人が圧倒的に多かったにも関わらず就職を選択することは、決して簡単な選択ではありません。
就職先は洋風の建売住宅の建築屋さん。
自分と同じように入ってきた人たちも含めて5人ほどの従業員でしたが…
徐々に減っていき、最終的には2名程度になってしまいました。
そこの棟梁は従業員を「人」として扱いはしません。
技術系の職場ということもあると思います。少しの気の緩みも大きな事故になってしまい、その後の作業にも影響が出てきてしまいます。
建売住宅の建設は、時間の制約がより厳しいそうです。
スピードが求められ、どう言う人が住むのかを想像しながらつくる時間はありません。
さすがのIさんも1年が過ぎようとした頃、辞めようと本気で思います。
しかし知人に
「棟梁にもなっていない」
と言われてしまいます。
叱咤激励のように感じる直球の言葉は、Iさんの力になりました。
自分が「キツイ」と思いながらも乗り越えてきたことは、辞めてしまえば振り出しに戻ってしまいます。
辞めたとしても得られたものは沢山あるとは思いますが、何か一つでもカタチに残るものがあれば違ってきます。
Iさんはその1年を乗り越えて良かったんです。
2年勤務した頃「こんな家に住みたい」と思わせたハウスメーカーの扉を叩きます。
「中卒…」
そこに対し難しい感触があったそうですが、2年間ちゃんと勤務したと言うことで採用してもらえました。
年齢からすると高校3年生の時です。
今までの建売住宅をつくるのとは違い、注文住宅ならではの技が必要となります。
2年のキャリアがあれど、分からない事の連続だったそうです。
年月が経ち、徐々に自分と同じくらいの世代が就職してきます。
知識量、技術力に圧倒的な差を感じていきます。
また、話をしている時のモチベーションにも違いを感じたそうです。
見ている先が違っていました。
そんな時、
「この子の方がやる気がある」
自分ではない子が評価されました。
技術を指摘されたのではなく、大工に向き合う姿勢について差ができてしまっていました。
「専門的な学校へ行っていないから仕方ない」と言う話ではありません。
この言葉をきっかけにIさんの大工への向き合い方が変わったそうです。
Iさんの棟梁は「見て盗め」という感覚の方だったらしく、どうしても分からない時は他の棟梁に尋ねに行ったり、自分の技を磨いていきます。
高校や専門学校に行った同僚たちに負けないために。
いつしか、経験のあるベテランの大工さんも知らない技術を身につけていきます。
私の実家にはそのIさんの伝統技法が散りばめられています。
棟梁の元を卒業して今はご自分が棟梁として弟子を育てる立場に。
周りからは「まだ弟子をつけるには若いんじゃないか」と言われるくらいの年齢。
しかし、お弟子さんもIさんと息をピッタリ合わせて、Iさんの技術を継承されていきます。
ハウスメーカーのホームページを見たことがあります。
技術者のページがありますが、そこにはIさんがそのハウスメーカーの代表的な大工として載っていました。
次の現場は純和風建築とのこと。
「一から勉強です」
会社からも認められ、お客さんたちに感動を与えるプロであっても未だ勉強を欠かしません。
いや…
プロだから「勉強」し続けるのかも知れません。
「専門的な学校へ行っていない」ことや「中学卒業後すぐに就職した」と言う出来事は、固定概念でしか考えられない学校現場に広い視野を与えてくれる大切なストーリーとなっています。
逆境と思える出来事も、本人の努力でいくらでも魅力へと変えていくことができるのだと教えてもらった気がします。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「営業」
喋るのが苦手とおっしゃっていましたが、「人と関わりたい」「喋ることを学びたい」そんな思いがあるそうです。
日本建築の魅力を伝えていきたいという思いがあるそうで、今はなかなかそのことを真剣に語る営業の方が少ないそうです。
「節約」や「低価格」という言葉のウケがいいこともあって、金銭面での話が中心となってしまうそうで…
しかし、本当に大切になってくるところは「見えないところ」だそうです。
家が10年20年先にもしっかり建ち続けることができるには、見えないところにもどれだけ力を発揮する必要があるか!?
逆に低価格で仕上げようとすれば、削っていくところはそういった目立たないところになってしまいます。
まさに「縁の下の力持ち」の言葉のようです。
家は
「一生の買い物」
とよく言われます。
その買い物に嘘のない建築物にするには、Iさんの言葉は必要不可欠になってくると思います。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「昔は同業者と話して傷の舐め合い。今はあまり落ち込まない。」
いい事ばかり考えるそうです。
先の未来を想像します。
家を建築する時は完成を想像します。
後悔を探せばいくらでも見つかります。
「ああしていれば」
「こうしていれば」
考えたってその過去を変えることはできません。
そうならないために、未来をどうするのか!?
どうしていきたいのか!?
変えられない過去を考えているよりも、未来を考えている方が断然楽しそうですよね。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「無理しないように。
自分にできることを。
やれることをやってほしい。」
年齢の離れた妹さんがいらっしゃいます。
学生の頃は宿題を教えてあげていたそうです。
とても面倒見のいいお兄さん。
そんな妹さんが就職した時、
「頑張ってこいよ」
後悔をしないIさんが、唯一後悔している妹さんへの言葉。
妹さんの職場の雰囲気や環境が悪く、それが原因で妹さんは体調を崩されたことがあったそうです。
棟梁となってお弟子さんがついているIさんは思うことがあります。
弟子が育つには、
・本人のやる気
・センス
・棟梁
と考えていらっしゃいます。
本人だけの責任ではなく、育てようとする教育者がどう力を引き出してあげられるのか!?
Iさんはここの部分が重要だとおっしゃっていました。
Iさんのエールは「甘やかし」では決してありません。
本人にどれだけやる気やセンスがあっても、それをサポートしてくれる人がいなければ持ち味は発揮されません。
環境が整った時に、自分の持ち味を最大限発揮して欲しいと言う本当に優しい、そして力強いエールです。
◯インタビューをして
「いつか」
ではなく
「やるしかない」
となった時、大きな大きなエネルギーへとなっていきます。
…
Iさんとお弟子さんにまたつくってもらいたい。
そんな贅沢な想像をしながら帰路につきました。
高校へ行くから「素晴らしい」はない。
大学や専門学校へ進学するから「成功」ではない。
就職したから「偉い」ではない。
大切なのはそこで何を感じ、何を学び、何をするのか!?
決められた道をいくことは簡単です。
しかし、険しい道であっても歩み続ける力は、人としての魅力へと変わっていきます。
簡単な道のりでは気づくことができない「自分」。
足りない自分がいれば、足していく努力をすればいい。
周りと合わせるための努力ではなく、自分が自分であるための努力を。
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