100人のプロの26人目のプロ‼️
バラを育てることに夢中になり、今では学校でもバラを育てています。
もともとキレイな花に対して興味はありましたが、
「バラは難しい」
と言う言葉からなかなか手を出せませんでした。
しかし同時に、
「バラは沼」
と言う言葉もあります。
香りはいいし、見た目もいいし…
プレゼントする時には「花言葉」もオシャレで。
生産としては愛知県は優秀な県です。
しかし、バラ園となると岐阜県に大きなところがあるそうで…
そちらへ仕事帰りに寄ることに。
大雨の中、雷もゴーゴーと鳴り響いていました。
この状況でバラ園に行ってもなかなか楽しむことはできないのではないか!?
となり、急遽行き先を変更します。
バラの生産で有名なところが岐阜県にあります。
そこへ行けば、バラ園にも負けない感じでバラの販売も行っているのではないかと期待を寄せ、進行方向を変えていきます。
ネットで調べるとバラの直売所は「のぼり旗」を目印にすればいいとのことだったのですが、見当たりません。
市役所に尋ねても「時期ではない」とのことで…
残念ながら帰りましょう!となった時、道の駅がありました。
「念のため寄ってみましょう」
となりました。
すると…
…
驚くほどの量の薔薇が販売されていました。
不発で終わるのかと思っていた分、喜びが倍増されていきます。
その時に出会ったのが「薔薇のプロ」Iさんの薔薇です。
日を改め、Iさんの直売所へお邪魔させて頂いた時、とても気さくに親身に対応してくださり、同時にインタビューをお願いしました。
どんなお話が聞けるのか!?
楽しみです。
◯子どもの頃の夢
「自分にできること」
周りは「野球選手」や「総理大臣」と言っていましたが、Iさんは子どもの頃から身体が弱かったので、コツコツできる仕事がいいなぁと思っていたそうです。
中学生の頃、園芸クラブに入り家業が農家だったこともあり農業全般ができたらいいなという漠然とした気持ちでした。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「娘のため」
園芸クラブに入っていたものの実際Iさんはスポーツ系の部活にも興味があったそうです。
しかしながら、当時の担任の先生に
「身体が強くないのだから、スポーツはやめておきなさい」
と言われ、自分の中で最初から運動をすることに可能性を見出してはいませんでした。
高校は農業高校へ進学します。
学力の観点からすると、進学校へ行く事も充分可能でした。
そのため担任の先生にも「進学校へ進学しなさい」と強く勧められたのですが、そこは貫きます。
ご両親もIさんには「サラリーマン」になって欲しかったそうです。
多くの人たちが農業から離れていっていたと言うことと、大変なお仕事だったからです。
高校の担任の先生が
「身体が弱くては農業はできない。柔道部に入りなさい」
と言います。
今までは
「身体が弱いから運動はやめなさい」
と運動部での活動は不可能と考えていたIさんでしたが、
「身体が弱いから」
逆に身体を鍛えて運動をしなさいと言われてしまうのです。
その中でも「柔道」という身体を激しく動かすスポーツ。
Iさんはこのことを振り返った際、この出来事があったから今の自分があるのだとおっしゃいました。
同じ状況なのに、方法が全く異なる生活スタイル。
言われるまで小学生の頃から体調が悪かったなんて気づきませんでした。
高校卒業後は「きゅうり」を育てるところに就職します。
それ以外に「トマト」「玉ねぎ」「なす」などを育てていました。
「きゅうり」などは育てっぱなしにしておくとみるみる大きくなってしまいます。
朝と夕方で大きく変化をする「きゅうり」。
一日として手を抜くことができない「きゅうり」。
大きくなりすぎてしまった「きゅうり」は廃棄されてしまいます。
大きくなると味は変化するのか!?
そんなことはありません。
味は変わらないし、成分も変わりません。
何が違うのか!?
「見た目」
だけです。
スーパーなどに卸すためには「規格」があります。
その求められた大きさでなければ価格がほとんどつきません。
大きくなりすぎたものを無理やり販売したとしても、そちらの方がコストがかかり「廃棄」した方が安くすみます。
元気に育てばそれで満足ではなく、決められた規格にするためには休みはありません。
そんな中、農家の方はどんどん減っていき、気づけば周りの農家の家庭は会社員の家庭へと変わっていました。
会社員には「休日」があります。
その夏の休日では、子どもの夏休みと重なり「家族旅行」と言う恒例行事を楽しむ家庭が増えていきました。
家族旅行へ行った子どもたちは、それぞれに自慢します。
Iさん自身、そういう夏休みを過ごしてきてはいませんが、当時の子どもたちはそれが当たり前でした。
しかし…Iさんが父親となった頃、子どもたちの当たり前は変わり、多くの子は夏休みを家族の行事として過ごします。
皆が楽しんでいる中でうちの娘だけが…
子どもを想う心が、今までの経験をゼロで考える勇気になりました。
「薔薇なら夏休みをつくってあげられるかもしれない」
もともと親方の依頼のもとで薔薇の接木を少しだけやっていたのですが…
自分が好きなように
自分が満足する形で
今までの「野菜」づくりから「薔薇」づくりへと変えていきます。
Iさんの「薔薇」の始まりです。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「インターネットに関する仕事」
昔からコンピュータ関係は強かったそうです。
私がIさんの薔薇と知り合って、Iさんを訪ねる際にホームページに助けて頂きました。
また、IさんはInstagramを使いこなしており、リアルタイムで薔薇の情報が入ってきます。
仕事だけをやっていくのではなく、新しい分野も取り入れる柔軟な思考。
「好きなこと」であるコンピュータ関係と仕事をつなげる面白さ。
それこそが働き方改革なのかもしれませんね。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「必死になっていると解決している」
台風や他の自然災害の時は、農作物に直に影響を与えます。
落ち込んでいても次に進みません。
現状を把握し、対策をしなければなりません。
毎年天候が違います。
そのことをIさんは「毎年勉強」とおっしゃっていました。
自然との付き合いをしていく中で、心は鍛えられていきます。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「エール…難しいねぇ。
自然に親しむのは大事。
緑豊かなところで散歩してほしい。」
その話をした際に、Iさんは子どもの頃のご病気について詳しく教えて下さいました。
「同じではないけど、参考になれば」と。
2歳の頃に小児麻痺になり、脊髄注射をしていました。
その影響もあり、普通に歩けなかったそうです。
年齢を重ねていくうちに歩けるようにはなっていったのですが、走ることはできませんでした。
今くらいの季節によくある「運動会」。
Iさんは嫌だったそうです。
得意不得意関係なく、またできるできないに関係なくみんなが参加をしなくてはいけません。
本来は、得意な子が運動を不得意とする子をフォローしたりして、チームワークが生まれてくるものなのですが、走れないIさんに対して「リレーであいつも走るのか」と言う嫌な言葉を耳に入れたこともあったそうです。
また、9歳の頃には胃下垂となってしまい、毎週土曜日は欠席。
第2土曜日が休日となるのが平成4年で、完全週休2日制になったのが平成14年の頃です。
Iさんの頃はまだ土曜日が休日にはなっていませんでした。
胃下垂ということもあって給食後は保健室で横になり、授業が始まる頃に教室へ戻るというリズムで過ごしていました。
授業にいないことが重なったことで…
「いいな。さぼれて」というような皮肉を言われることも出てきました。
目に見える形で異変が起きているのなら、周りの対応はもっと優しいものになったかもしれません。
病院への通院や、学校への欠席が増えることは大変だったと思います。
体調が悪いから。
授業に参加できないから。
だから勉強もできないし、宿題もいい加減になってしまう。
「しょうがない」
…
…
しかしIさんは、その言葉を絶対に使いませんでした。
理由をつけようと思えばいくらでもつけられます。
「〇〇だからしょうがない」
自分に対してもそう言って思い込むことで自分の心は騙せます。
「やらない」ことを「やれない」とすれば自分と向き合わなくてすみます。
でもIさんは、
「〇〇だからやる」
敢えて立ち向かいます。
周りにバカにされるなら、それをモチベーションに。
負けてなるものか。
運動ができないのなら勉強だけは誰にも負けない!
その思いで積み重ねていきます。
小学生の頃はテストで常に1位をとり続けたそうです。
中学生の頃は2〜3位には常にいたそうです。
やらない理由はいくらでもできます。
しかし、自分自身が
「言い訳」
なのか
「事訳」
なのかはちゃんと知っています。
自分と向き合うことに逃げていないから自分を好きでいられます。
自分を好きになれたら…
こんな無敵なことはありません。
無敵なエールです。
◯インタビューをして
「規格」
大きさに規格があります。
味や成分が同じでも、見栄えで価格が変わってきます。
「きゅうり」は「きゅうり」であるのに。
何も変わらないのに…。
価値がないとしているのは「規格」を決めた人。
もし大きい「きゅうり」が流行すれば、規格は変わらないかもしれませんが、価格は変わってきます。
形が変わったものが流行すれば、それもまた価値が高まってきます。
大きさや、形は個性です。
いくらでも価値は変わってきます。
「先生の評価」とは何なのでしょうか。
何を基準にしているのでしょうか。
子どもたちは未来ある宝であることに変わりありません。
色々な色を持っている子どもたちだから面白いのです。
色々な個性を持っているからドラマが生まれるのです。
そんなことを薔薇を通して、教えて頂いた気がします。
帰り際、「学校に薔薇は飾れるの?」とIさんは私たちに尋ねました。
子どもたちにと色とりどりの薔薇の切花をバケツいっぱいに用意して下さり、新聞紙にくるんで渡して下さいました。
とっても香りが良く、見た目も綺麗で…
様々な色があることで、どの方向からも見え方は違っていて、そしてどの方向からもとても美しくて。
学校に楽しみを見出せない生徒がその花瓶に飾られた薔薇を食い入るように見ていました。
「すごくキレイですね」
「薔薇のプロが皆さんにって下さったんだよ」
「…先生。持って帰っていいですか」
「開ききっているから、家で飾る頃には見頃が過ぎてしまっているかもよ」
「それでもいいです」
「好きなの持っていきな」
そう言うと、嬉しそうに「これと…あれと…それと…」
Iさんの思いやりは、その生徒にマスク越しでも分かるくらいの笑顔をつくりあげていました。
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