100人のプロの31人目のプロ‼️
祖父が亡くなってもうすぐ18年が経ちます。
生まれたての子も、成人式に出席するくらいの年齢になっていましょうか。
祖父はお酒を飲みに時折、外食をしていました。
酔っているようでしっかり店を見定めていて…
常連となる店を吟味していきます。
多くのお店では、常連になるとお客に甘え、いい加減にお勘定したり、お店としてのポリシーが薄れてきたりします。
祖父の最後となるお店は、それが一切ありませんでした。
どんなに通おうともお店のポリシーを持ち続け、お客への揺るぎない「おもてなし」をしてくれるお店。
そんな素敵なお店に祖父は通っていました。
祖父は美味しい料理と、美味しいお酒を味わい、さらに会話に花が咲くと、
「大将!みんなに!」
と言いながら大きな右手を広げてハンドサイン。
「お店の人に好きな飲み物を」
といういつものメッセージが込められています。
大将も笑顔で応えて、従業員のみんなに「好きなもん飲めよ」と声をかけると、皆が祖父の席まで来て、笑顔で
「有り難うございます」
そんな光景を当たり前のように感じ、眺めていました。
大将は旨い海の幸が入ると、サッとうちに寄って
「これ食べて」
と差し入れてくれていました。
祖父と大将のあったかい関係です。
祖父の面影が恋しくなって…
無性に大将のお店に行きたくなります。
本日は、心に寄り添う割烹料理の大将「板長のプロ」Mさんにお話を伺いました。
◯子どもの頃の夢
「小中学校は何かやりたい!はなかった」
今とは違って子どもの頃は大人しい方だったそうです。
今は矢沢永吉さんのような雰囲気のある方。
高校生の時の影響が大きかったみたいで。
色んな人たちがいてとても面白かったそうです。
ちょっとやんちゃしたり…読書したり…
Mさんにとって高校は多くの学びを与えてくれる場となっていました。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「読書」
高校卒業が近づくとヤンチャしていた自分ともそろそろ卒業。
自分の将来を考える時、もともと興味のあった料理に関する本に出会います。
ロッキー青木さんの『ベニバナ』
ロッキー青木さんと言えば、アメリカに日本食ブームを巻き起こした立役者。
「和食」は無形文化遺産に登録されるなど今でこそ世界的に「美味しい」が常識となっている日本食。
そう言った未開の地へ挑戦し続けた方の考えに触れ本を読んでみる…
最後まであっという間に…。
ビビッときたものがあったそうです。
その本との出会いがMさんを決心させます。
卒業後は料理に特化して学び、愛知県の中で色々な所へ行って修行。
…
そして24歳。
Mさんの開業した年齢です。
どこでお店を開こうか!?
…
Mさんのお母様は昔、駄菓子屋さんを営まれていました。
街の駄菓子屋さん。
小腹が空いた時にサッと寄って、軽く腹ごしらえ。
地域の大人とつながる子どもにとって重要な社会。
おうちの人が仕事で出掛けていても、「ただいま」と言えるそんな場所です。
昔はそこに紡績業の会社があり、その関係でよくお客さんも来ていました。
年数が経ち、紡績業の会社は他へ移動してしまい、自然と駄菓子屋さんも閉めていきます。
その空いていた場所にMさんのお店がオープンしていきます。
不思議な「縁」を感じます。
「常滑で商売するのはかなり難しい」
地元では有名な話です。
人口が多い隣の半田市で開業するお店は多いのですが、Mさんは敢えて地元の常滑で勝負します。
「敢えて」の理由は、地元への愛なのか、大切な場所としての気持ちなのか…
わかりませんが、Mさんは振り返って
周りの人たちに支えられてここまでこれた
その言葉を伺った時、Mさんが常滑を選んだ選択は間違っていなかったと強く思います。
お店へ行くと気持ちのいい大将の
「いらっしゃ〜い」
の声。
お母様がちょうどいいタイミングでおしぼりを持ってきて下さったり、お話をして下さったり。
大将の奥様は気持ちよくお料理を持ってきて、コミュニケーションをとって下さったり。
本当に素敵なお店です。
それぞれにそれぞれの持ち味があって、それぞれがそれぞれに活かし合っています。
決めた「ルール」ではなく、自然とこの連携スタイルができたそうです。
誰かを誘わなくてもそこに行けば気心の知れたお店の方と、常連さんがいる。
そんなお店です。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「海外に行って何かやりたい」
特に何かを挑戦したいとはっきりしている訳ではないそうですが、海外での挑戦に憧れを持っていました。
ロッキー青木さんから受けた刺激の火種はまだ、「挑戦」という可能性を秘めているような気がします。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「引きずらない。そんなに落ち込まない」
決して自分の不注意はなくても、顧問先の申告ミスなどがあるかもしれません。
それに対して追加で税金を払う必要があったとしても、Mさんはそこに留まりません。
食中毒が世間で流行る時、充分な注意を払っていてもお客さんの中には、体調と食べた物の相性で食あたりが起こってしまうかもしれません。
そんなことを考えると、常にお客さんの安全に気を遣って神経質になってしまいますが、だからと言って妥協はしません。
「大切なのは次、どうするか!?」
そう考えて次に向け全力で力を注いでいきます。
留まることは次への挑戦の足枷(あしかせ)になる!
Mさんから教えて頂いたように感じます。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「自分を好きでいたい。
そのためにどうするか!?
いつまでも好きであるために。
自分を好きでないと、他の人を好きになれないからね」
『自分のこと好きですか?』
子どもに対して質問をします。
自信に満ち溢れていたり、あまり自分のことを振り返っていなかったりする子は、
「はい」
と答えたりします。
『じゃあどこが好きなの?』
と続けて質問すると、自分のことを振り返ったりしていない子は、答えることができません。
自分を振り返り過ぎて周りの人たちのことを気にし過ぎている子は
「自分のことは好きではありません」
と返ってきます。
「自分のことを好きでいられるように頑張りましょう」
と言ったりすることもありますが…
Mさんの言うように
「好きになるためにどうするか!?」
と言う発想は大切な振り返りかもしれません。
「自分」という存在を一番!知っているようで知らない。
そして、求めるものが一番ハードルの高い人物である「自分」。
そんな自分を好きになれたら、、、
まさに力強いMさんからのエールです。
Mさんは好きな自分になるためにこんな方法を紹介して下さいました。
「この人みたいになりたい」
そう思える人を探すという方法。
その人になるのではなく、「みたいに」というのが重要です。
だって、あなたはあなたで、とっても大切な存在で、あなたにしかない魅力は沢山ありますからね。
「この人みたい」を心がけていくことで、「自分」を見つける手がかりになるかもしれません。
Mさんは憧れの人の写真をお店の入り口に飾っていました。
もう亡くなられている方ですが、ご存命の時はよくご指導を頂いていたそうです。
料理界の方ではなく、実業家の方。
同じ業界でないからこそ純粋なご指導。
その方が
「最高の料理を3品は用意しておけ。大切なお客さんが大切な方を連れて来た時に、恥をかかせるような事は絶対してはいけないよ。だから店はキレイにしておけ。お店にお金をかけろ。ケチったらケチな客しか来ないぞ」
メニュー表は、大将のおすすめがA4用紙、裏表にズラリと並んだ毎日手書きのもの。
そのこだわりもまた、自分を好きでいられる努力の一つでした。
◯インタビューをして
教員を長くやっていると、生徒たちが成人の知らせに来てくれます。
あれから…
たった5年。
されど5年。
どことなく中学生の頃の面影が…。
でもみんな立派な大人です。
中2の頃に担任をしていた子と部活を担当していた子が挨拶に来てくれました。
わざわざ連絡をくれて、わざわざ私の地元まで来てくれるということで…
「何かご馳走してやりたい」
そんな思いになり頭に浮かんだのはMさんのお店。
大切な教え子たちが腹一杯、満足してってもらいたい。
「大将。お久し振りです。
予約の電話なんですけど…
◯月◯日にお願いしてもいいですか?
実は僕、今、学校の先生やっていて…
…
… 」
こちらの思いだけを一方的に伝えたところ
「は〜い。わかりました。お待ちしていま〜す」
祖父の時と変わらぬ応対。
嬉しかったです。
当日…
「あの子たちの顔わかるかなぁ。」
「名前、ちゃんと思い出せるかなぁ。」
会えていない事の不安は、再会をきっかけに不要となり、教え子たちとお酒を交わしながら想像よりも大きく成長した彼らを誇らしく、自然と笑みが溢れ出していました。
話題は彼らが中2だった頃。
私が他の教員と喧嘩をしていた事。
私が学年主任とも、揉めて学年を繰り上がれなかったこと。
とにかく話に花が咲きます。
話が尽きることがありません。
気づけば飲み放題の時間が過ぎてしまっていて。
それにもかかわらず、大将が融通を効してくれていて…
教え子たちに
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
と2階の部屋からカッコつけて1階のレジへ向かいます。
気づけばお客は私たちだけに。
レジの前のカウンターに大将が待ってて下さって…
追加料金が出てもおかしくないと思っていた私は金額を聞いて
「あれ!?
大将!ちゃんと払いますから、気を遣わないでください」
と言うと、大将は…
「またちょくちょく飲みにこいよ」
祖父が亡くなって久し振りの来店。
大将は変わらなぬ声かけをしてくれました。
どんなに成長しようと、どれだけ風貌が変わろうと、どんなにカッコつけようと…
変わらないでいてくれる場所があります。
祖父に会いたくなった時、祖父の訪れていた場所を訪ねます。
おじいちゃん。
ステキなお店の常連になっていてくれて、ありがとう。
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