100人のプロの41人目のプロ‼️
私のせいで日本の牛乳は無くなります。
私たちのせいで子どもたちに、栄養ある給食は提供できなくなります。
「可能性」ではなく「現実」として受け止めなくてはいけない未来が、すぐそこまで…
「白いものは体によくない」
「牛乳は腸が汚れる」
「牛乳はお腹を緩くする」
そんなことを言われ、牛乳を避ける方がいます。
それは…本当なのでしょうか?
「お腹を緩くする」と言うのは乳糖不耐症と呼ばれる現象です。
欧米人に比べ、アジア人はこの乳糖不耐症の方が多いと言われていますが…
実際、コップ一杯でそのような症状は起こりにくいそうです。
キンキンに冷えた牛乳を一気飲みや、大量に飲む場合は確かに緩くなります。
…
これは牛乳に限った話ではないと私は感じてしまいます。
以前、「牛乳づくりのプロ」からお話を伺い、牛乳の大切さを実感した私ですが、世の中の流れはその反対。
糖質制限のブームにより牛乳を控える人たち。
コロナ禍の影響による牛乳や生乳の在庫増加。
クレーム対応による学校現場での食育の形骸化。
これらのことが「生乳需給」の問題へと発展していきました。
簡単に言うと「牛乳が余りすぎている」と言うこと。
2023年3月からその対策として…
「低能力牛を処分することで15万円の交付」
が始まります。乳の搾乳の量が少ない牛の処分を支援するもの。
結果として、牛乳の量を減らすことができバランスをとることを可能にする…
そう語られています。
今は円安の影響で牛の餌となる「牧草」や「青草」の価格が高騰しています。
以下にザッと計算してみました。
牛への餌代(青草)…2020年1トン:65,000円→2022年1トン:100,000円
(長周新聞 2022年11月23日)
1頭の牛が1日に食べる餌の量(青草):50〜60kg
1日の1頭の搾乳量:20〜30L
(一般社団法人Jミルク)
1トン(青草)=20頭の1日の餌の量=400Lの牛乳
=2,000人分の給食(一人分の給食の牛乳量:200ml)
60円(給食の牛乳の値段)✖️2,000人分=120,000円
この数字が日本の離農に拍車をかけます。
そして3月から始まる低能力牛処分への補助金が、離農の機会を与えます。
もっと牛乳の消費が増えれば…
もっと牛乳の理解が深まれば…
私が、もっと学校で食育をしていれば…
日本の健康寿命をあげ、食料自給率の向上につながっていくのではないでしょうか。
この状況下であえて牛舎の拡大を考え、危機的状況に立ち向かおうとする方がいます。
「乳牛のプロ」Sさんです。
Sさんの熱い想い、皆さんに届けたい。
◯子どもの頃の夢
「農業以外」
農業以外なら何でもいい!
そう考えていました。
お父様もお母様も休みなく働いて、大変そうにしていたのを肌で感じていました。
生き物相手です。
家族みんなで旅行…
そんなことはできませんでした。父か母のどちらかが連れて行ってくれる。
それでもかなり無理をしてくれていることを知っていました。
だから反発心は生まれません。
「なんで僕ばっか」
なんていじけたりもしませんでした。
ただ…自分の仕事にしたくないという思いだけはあったそうです。
強いて言うのなら、家業に対する反発心はあったのかもしれません。
◯今の仕事に就いたきっかけ
「高校の時のアルバイト」
高校へは普通科へ進学します。
普通の生活に憧れ、普通の日常を求めます。
みんながするように、アルバイトにも挑戦します。
農業は小さな時から手伝っていました。
お小遣いは、お手伝いを行ったら「報酬」としてもらえるものでした。
より効率的に、よりクオリティー高く。
その精神は無意識に身についていきます。
だから、アルバイトでも自信がありました。
指示された仕事を自分なりに工夫を施します。
より効率的に、よりクオリティー高く…
しかし、その工夫はアルバイトでは「不要」なものに。
言われたように。
言われたままに。
求められたものはそれでした。
考えないことは「楽」かもしれません。
しかし、Sさんにとっては窮屈を痛いほどに感じさせるものでした。
「農業はもっと自由」
家業から離れて気づけたのは、Sさんが最も仕事に求めていたものでした。
休みがないのなら、休めるようにすればいい。
重労働であるのなら、改善できる事を探せばいい。
決心したSさんは「牛」を専門的に学ぶことができる農業大学へ。
大学卒業後はあらゆる事を試していきます。
お祖父様から続いてきたSさん牧場を、一生懸命に。
しかし、子どもとの時間をも犠牲にしてきたお父様は、Sさんの新しい取り組みに反対です。
Sさんはお父様と面と向かってお話をすることはできません。
常に牛舎で作業をされていたお父様の背中をみて、育ってきたSさんにとって、作業の方法に口出しをするなど…
なかなかハードルの高いものです。
様々な事を変えていく話はいつもお母様が間に入ってくれていました。
「間違ったことはしていない」
と言う信念が、Sさんを支え、父を越えようとする力になっていきます。
お父様はご自分のやり方を曲げません。
一方で創業者であるお祖父様は、Sさんの熱意に付き合ってくれます。
どんな思いだったのでしょうか。
お祖父様、お父様、お母様…それぞれに考えがあって、それぞれに気持ちがあります。
しかし、Sさん牧場にいる全ての人間は、Sさん牧場を想っています。
それは確かなのです。
だからやっていけるのです。
家業で勤め始めて10年程が経った時でしょうか。
Sさん自身が父親に。
不思議なもので…
自然と自分の父の想いに触れていきます。
父の眼差しに。
父の仕草に。
父の愛に。
時を経て気付かされます。
言葉を交わすことの少なかった父の心に気づかせたのは、言葉を介さず子どもが教えてくれていました。
子どもが牛舎に入ることがどれほど親をヒヤヒヤさせ、目の離せない状態か。
何事もなくその場にいれたということは、そういう事なんです。
父の想いに触れるようになった頃、酪農でも徐々に手応えを感じるようになっていました。
「世代交代する」
お父様がおっしゃいました。
Sさんがお父様に認められた瞬間です。
遂に。…
遂に。遂に。
ガッツポーズをしているその表情に感情がこぼれます。
その感情は安易な一言では表現しきれない、喜びと寂しさと…
受け継いだ想い。
正しいと思えたことを、ただまっすぐに。
◯今、自由に選べるとしたら何の仕事をしてみたいか
「絶対に酪農家」
お金さえあればできるものではありません。
「牛乳を増産してください」
と言われ、じゃあ明日にでも…
そういうものではありません。
搾乳ができるまでに3年かかります。
愛情を込めて、手間をかけて。
この仕事にとてつもなくやりがいを感じていました。
◯落ち込んだ時、どう乗り切るか
「落ち込む前に考える」
あまり落ち込まないタイプだと言います。
それは危機に対して事前に「どうすればいいのか!?」をしっかり考えるからだそうです。
自分が様々な出来事を無理に
「変えてやろう」
と思わないことが、考える力となっています。
考えるのをやめた時、それは「諦めた時」なのかもしれません。
◯発達個性を持った子どもたちへのエール
「悩みは人それぞれあって、
悩み事ばかり考えていてもどうにもならない。
もっといいことをやっていけば人生は楽しい。
自分次第」
地域の子どもたちが自転車に乗って、Sさん牧場を待ち合わせの場所にします。
待っている間も牛を眺められるから。
子どもたちが来ても笑顔の清水さん。
Sさんの地元の小学校はSさん牧場へ見学に来ます。
無償で牛舎を案内し、牛乳について、牛について色々お話をします。
搾乳の体験をしたりもします。
みんなに牛乳の本当のことを知ってほしい。
その想いで続けています。
ある小学校では、実際に子牛を校庭で40日間飼育します。
生命の尊さを学ぶために。
全国でも珍しい取り組みです。
多くの学校では、生き物をなるべく飼わないようになってきています。
それは、職員の負担が大きく、亡くなってしまった時の心の傷がでかいからという理由…
本当に知るべきことは何か!?
言葉を話さない動物たちの心を考える力は、子どもたちにとって大切な心を育みます。
大切な事を教えてくれるSさんの取り組みは、子どもたちの人生の幅を広げてくれています。
◯インタビューをして
割引になっているものを選び
「少し得をした」
と喜ぶ日常。
どちらの方が安いかと比べ、スーパーをハシゴし
「こっちの方が安かった」
と喜ぶ日常。
そんな日常はもうすぐで終わるのかもしれません。
今日あった商品が明日にはなくなる事なんて当たり前の世界になってきました。
記憶にも新しい「マスク」は身近な例。
オイルショックと呼ばれたあの時代に、トイレットペーパーは無くなりました。
あの騒動は
「トイレットペーパーがなくなるかもしれないよ」
と事実とは異なる噂が更なる噂を呼び、各家庭が買いだめをした結果、起きました。
想像してみてください。
当たり前を当たり前として生活することができなくなった世界を。
生活に根ざした食品たちが、商品棚に陳列できなくなっている世界を。
「牛乳が〜」
「卵が〜」
…
今、一生懸命に世界の流れから抗い、私たちの気づかない所で私たちを支えてくれている人たちがいます。
その方々に、気づいて下さい。
流れが抗いを飲み込む前に。
もう少し…自分たちの体をつくってくれているものに敬意を。
それをつくってくれている人たちに感謝を。
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